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やっぱすっきゃねん!
【スポーツ その他小説】

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fainal1/2-16

 グランド内は試合への準備が進められる中、一哉は有理逹から少し離れた席で練習の様子を眺めていた。
 すると、そこに携帯が着信を報せた。一哉はすぐに通話ボタンを押した。
 相手は榊だった。

「どうしたんです?」
「今、三塁側スタンドにいるのか?」
「そうですが」
「わたしも今、球場に着いたところでな。ちょっと正面入口まで来てくれんか」
「分かりました、今から向かいます」

 違和感を覚える電話だったが、それ以上に追求することもなく正面入口へと向かった。

「榊さん!」

 榊は正面入口の、日陰になる場所で待っていた。

「いやあ、すまんな。急に呼び出して」
「今日は、休みですか?」
「ああ、今日は部員を連れて観に来たんだ」
「だったら急がないと。試合開始まで幾らもありませんよ」
「心配するな、特別席を用意してあるんだ。お前と観ようと思ってな」
「わたしとですって?」

 どうやら、部員逹とは別行動のようだ。榊の言葉は、一哉を少なからず驚かせた。

「こっちだ……」

 榊が、入場口を奥へと進みながら手招きした。一瞬、一哉の中に躊躇いが浮かんだ。
 何か裏があると直感した。

(またか……)

 しかし、すぐに思い直すと後をついて行った。
 通路途中の脇に扉があった。榊が扉を開くと、薄暗い空間の中に地下へと通じる階段が現れた。
 榊が足元を確かめるように降りていく。一哉も後に続いた。地下に到着すると、目の前には緩やかに湾曲した長い通路が続いており、壁の左側は、五メートルほどの間隔で扉が三つ設けられている。

「ここだな」

 榊は、一番手前にある扉を開いた。

「さあ、入ってくれ」

 ガラス越しのグランド風景が視界いっぱいに飛び込んできた。ガラス面と同じ長さの机に、その上に置かれた古い二基のマイクが見てとれた。

「なんです?ここは」

 一哉が榊に訊いた。

「ここは放送用のブースでな。今はもう使われてない。
 知人に頼んで、此処を開けてもらったんだ」

 昔は高校の県予選が開催され、此処から発信されるラジオ放送によって、多くの人々を楽しませてきた。
 そして今は、その役目を新しく建設された県営球場へと譲り、もっぱら中学校の大会や、一般への貸し出し等が主な役目へと変わり、此処も使われる事はなくなった。
 そんなかつての場所は、当時ままの姿で榊と一哉を迎えた。

「……!」

 一歩足を踏み入れる。微かだが冷気を感じられた。

「少しは冷房が効いとるようだな」

 室内は少しカビ臭く、机に溜まった埃が放置された年月の長さを物語っている。榊は、壁に立て掛けられた折り畳みの椅子を組み立て、持っていたタオルで座面を拭った。


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