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Still have a longing for…
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Still have a longing for…-1

進学校が決まり、卒業式も終えた私達は、ほとんど毎日カラオケ三昧だった。
高校からは別々。
もうすぐ、彼女とも今までみたいにいつもは逢えなくなる。

…この季節になると、思い出す事がある。
もう、ずっと前の事だ。
曖昧になり始めた記憶を、私はぼーっとたどっていた。
『人混みに消えてゆく背中に向かって手を振った…』
彼女が歌いだしたその歌は、私の知らない歌だった。
でも、考えていることをズバリ言い当てられたような歌詞に驚き、画面に流れる歌詞を必死に目で追った。
『わがままもしたし つまらないケンカもした 逢えなくなる日が来ることも知らないで…』
その瞬間、私は涙を流していた。
「…アズミ」
涙は止まらない。
彼女も、こっちに気付いたようで、ひどく慌てていた。

狭いカラオケボックスの中に2人。
その曲は、静かに流れ続けた。
その歌は、きっと恋の歌なのだろう。
別に、私とアズミは恋人同士だった訳ではない。
そもそも、私もアズミも女だし、年齢なんか12も違う。まる一回りだ。
…でも、そんなの関係無い。
『わがままもしたし つまらないケンカもした 逢えなくなる日が来ることも知らないで』
それは、私とアズミそのものだった。

アズミと初めて逢ったのは、確か、私が10歳。アズミは22歳のときだった。
アズミは、私のお姉ちゃんとして私の家に来た。
上にお兄ちゃんもお姉ちゃんもいなかった私は、それが嬉しくて、ただ嬉しくて、アズミに甘えていた。
我が侭ばかり言って、困らせてばかりだった。
でも、迷惑をかけたかった訳じゃない。
ただ、アズミが好きだった。
毎週土曜日。
アズミが家に来るのが待ちきれなかった


アズミのカバンから顔を出すお菓子を、私は見逃さなかった。
「アズミ、これ何?」
「あぁ。ボンタン」
「ボンタン?」
「そう。サオリも食べる?」
「うん!」
私は、生まれて初めてボンタンアメを食べた。
「おいしい!」
私は、アズミからボンタンの箱を取る。
「あ〜 アズミのボンタン!」
私は、箱いっぱいに入っていたそれを、全部たいらげてしまった。
アズミのボンタンの復讐か、その後すぐに勉強が待っていた。
「サオリ、それ違うよ」
「え?」
私は、漢字ドリルを見る。
「あってんじゃん!」
私はふくれる。
「違うよ。その字は、さんずいじゃなくてくさかんむりなの。」
「どっちだってかわんないじゃん」
やっぱしふくれながら、それでも一応なおす。
反抗期だったんだ。
一段落ついた頃、家の母は紅茶をいれた。
「アズミ 砂糖は?」
私は、スティックシュガーを持ち、アズミに尋ねる。
「いらないよ〜」
「いつも入れないの?」
「ううん 甘いもの食べる時は入れないの。入れなくてもお菓子が砂糖の代わりになるしね♪」
「ふーん」
私は、なるほどと思いながら、蜜柑を取った。
アズミも蜜柑をむく。
「…ねぇアズミ」
「ん?」
「なんで蜜柑上からむくの?」
アズミは、私とは逆に蜜柑をむいていた。
「蜜柑はねぇ、上からスジがでてるから、上からむくとスッとスジがとれるんだよ〜」
私は、またなるほどと思い、早速同じようにむいてみた。
が、スジはブチブチ切れて、なかなかアズミのようにうまくいかない。
アズミは、そんな私を見て笑ってた。
私も、つられて笑う。
そんな日々。
私は、アズミの一言一言に物凄く感心してた。

…逢えなくなるって知ってたら、もっとイイコにしてたのに


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