クリスマスの電話-2
「ふぅ」
リビングに戻る時に、もう1本のワインと、2人分のワイングラスを手にした。
「ここからはお酒至上主義の時間です」
私がそう告げると、リンはワインのコルク栓を開け、ワイングラスにワインを注いだ。
ブドウの果肉の色をした透明の液体が入ったグラスを、チンと合わせた。
私はリンの為に買ってきたクリスマスプレゼントを鞄から取り出した。
「はいこれ、プレゼント」
緑色の包装紙に赤いリボンが掛けてある箱を受け取ると、嬉しそうに目を細めた。
「プレゼントは私よ、じゃねぇのか」
「返せ、今すぐそれ返せ」
冗談だよ、と言って包装を開ける。中身は、ボールペンだ。
「うわ、パーカーのボールペンじゃん、えー、マジでか、嬉しい。美奈ありがとう」
目を輝かせて喜んでいるリンを見て、安心した。
「リンはいつも貧乏くさい100円ボールペン使ってるからさぁ。異動もした事だし、ちょっと良い物使いなさい」
彼はボールペンを片手に持ち、上にあげ、色んな角度から見ている。「勿体なくて使えねぇよ」と呟いた。
「俺もあるんだ」
がさごそと鞄から出したのは小さな箱だった。同じように赤いリボンが掛けてある。
「見ても宜しいでしょうか?」
「どうぞ」
ドキドキした。頬が上気しているのが自分で分かる。包装紙を破かないように、慎重にテープを剥がし、少しずつ、少しずつ、中身に近づく。
ベロアのような手触りの、紺色をした箱の中には、クロス型にジルコニアが配置されたネックレスが入れられていた。
「お前、普段あんまりアクセサリつけねぇから、仕事中でもつけられっかなと思ってシンプルなのにしたんだ」
箱から取り出し、掌に引っ掛けてみる。ジルコニアに光が反射してキラキラしている。
「ありがとう。これってシルバー?」
「ば、ばか、それプラチナだよ。温泉に入っても変色しねぇからな。だからずっとつけとけよ」
自然に零れた笑みが、少しずつ大きくなり、「へへぇ」とリンに笑顔を見せた。
リンも子供の様な笑顔で笑った。
すぐに首につけた。何があっても、外すことが無いように。
嬉しすぎて、目じりに少し涙が浮かんだことは、リンには気づかれていない筈だ。