4人の夜-2
旅行二日目も、彼らはビーチで遊び、泳ぎ、昼食の後、眠くなったら昼寝をし、街でショッピングや食事を楽しんだ。日本での慌ただしい毎日を忘れて、この7人家族は心の底からここハワイでのバカンスを楽しんでいた。
「今日こそ、ケネスを押し倒す!」ミカが唐突に言った。
夜のディナーをゆっくりと味わった後、7人はコンドミニアムに戻った。子どもたちはすぐに自分たちの部屋に引きあげていった。
「ミカ姉、もっとこう、ロマンティックな言い方、ないんか?なんやの『押し倒す』って。」
大人4人はベッドルームでくつろいでいた。一つのベッドにマユミとケネス、隣り合ったもう一つのベッドにケンジとミカが座ってチョコレートをつまみながらコーヒーを飲んでいた。
「最高級コーヒー、ハワイのコナやで。」ケネスが自慢げに言った。
「コクがある。香りもすばらしいな。確かに今まで飲んだコーヒーとは違う感じがする。」ケンジが言った。
「そやろ?日本でも高価やけど、ここでもやっぱり高い。」
「わざわざ買ってきたのか?」
「そんなわけあれへん。わいは無一文や。支配人からの差し入れや。」
「なんとありがたい・・・。ケネス、感謝するわ。」ミカが言った。
「そう言えばミカ姉、今日はあんまり飲んでへんな。」
「昨日反省した。あんたを酔っぱらわせて襲うつもりが、自分がへべれけになって、わけがわからなくなった。その二の舞はごめんだ。」
「ほんま、なんかロマンティックとは縁遠い、っちゅうか・・・・。」
「それがミカ姉さんのいいところなんだけどね。」マユミがチョコレートを口に運びながら言った。
「よしっ!ケネス、こっちに来い。ケンジはあっち行け。」ばしっ。ミカは隣に座っていたケンジの背中を平手で勢いよくたたいた。
「いて、いててててて!」ケンジは悲鳴を上げた。「な、何てことするんだ!ミカっ!」
「どうしたの?」
「日焼けが痛いんだよっ!」
「そうだったか、ごめんごめん。じゃ、ケネスを借りるよ、マユミ。」
「うん。」マユミは少し顔を赤らめた。