4 令二-2
「自転車はどこに?」
「駅の横に停めてあるんだ」
「じゃぁ同じ方向だ」
こうして並んで歩いていると、俺より大分、背が小さいんだな、と思う。白衣を着て仕事をしていると、何だか凄く背が高く見える。何でだろう。
「また飲み会の時は、頼むよ。前は禿部長とウドンコースだったんだけどさ、あの禿もいなくなっちゃったし。」
「もうさ、1杯目からお茶にすりゃいいのに。気ぃ遣ってると鈴宮君も禿げるよ?」
「そういう訳にはいかんのだよぉ」
頑張るねぇと、志保ちゃんは同情の眼差しで笑った。人通りの少ない路地に入り、俺の自転車が見えてきた。
「私こっちだから。」
「あ、今日はサンキュね。また明日」
右手をひらひらさせて左へ曲がっていった。
志保ちゃんが曲がっていった路地から、悲鳴にも似た短い声が聞こえた。
急いで路地を覗くと、志保ちゃんが背の高い男性と話をしている。彼氏だろうか。
彼氏と思しきその人は、志保ちゃんの腕を引いて闇に消えて行った。
何か犯罪にでも巻き込まれたのかと思ったが、そういう訳ではなさそうだ。
そのまま俺は自転車に乗り、寮へ戻った。