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キャッチ・アンド・リリース
【大人 恋愛小説】

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39 奇跡はあるって-2

 その夜、母に電話を掛けた。掛ける前から泣きそうだった。親不孝な娘を、許してください。
 「お母さん?」
 『ミキ、どうしたの?』
 「お母さんあのね、私、離婚しようと思うんだ」

 『――そう。お前がそう決めたなら、そうしなさい。理由は聞かないけど、時々見るお前の顔は、あんまり幸せそうじゃなかったもん。今お父さんに代わるから』
 母は何も訊いてこなかったが、訊かれても答えられるような状況ではなかった。涙が溢れて止まらないのだ。嗚咽が止まらない。

 『お父さんだけど、お母さんから今聞いたよ。好きにしなさい。お父さんはあの男、初めから好きじゃなかったから』
 そういって父はカラリと笑ってくれた。私も泣きながら笑い返した。うまく笑えたかなた。あぁ、父の様に、母の様に、子供の考えを最優先にしてくれる親になりたい。そんな旦那さんが欲しい。

 「ありがと。あの、お母さんにも――」
 『ありがとでしょ、言っておくよ。大丈夫。あんまり泣くと目が腫れるからな。冷やせよ。じゃあね』
 受話器を置く。仲が良い父と母ではないけれど、子供を想う気持ちは母も父も一緒なんだ。

 目が腫れる、という父からの警告を無視して、一頻り泣いた。


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