17 疾走 -2
自宅に戻り、ユウにメールをした。言い訳をするか、謝るか、色々と逡巡した結果、ストレートに『試験が終わりました』とメールした。すぐに返信はなかった。
4日経ったところで、ユウの友人であるテツに電話をした。
「ユウと連絡がとれないんだけど」
『あぁ、ユウは今スノボ行ってるっぽいよ。何、急用?』
ベッドに寝そべって、小さなぬいぐるみを天井に向かって投げては取る。
「急用じゃないだけど、暫く連絡がとれなくて」
投げたぬいぐるみがあさっての方向へ飛んで行った。こうやって飛んで行っちゃうのかな。。
『ユウに何かしただろ、何か怒ってたけど』
「あぁ、そうなんだ。怒らせるような事をした自覚はあります」
やっぱり「家庭教師のお兄さん」事件は、ユウを怒らせるには十分すぎる出来事だったのだ。
『まぁ連絡するようには、俺から言っておくよ。何があったのか知らないけど、反省はしてんだろ?』
反省?あんな事があって、それでも後日、サトルさんの家まで行って、セックスまでしてきた私は、反省なんて――どちらも失いたくない狡猾な私は、嘘を吐く事しか思いつかなかった。
「してますしてます。頭がめり込むぐらいに土下座しちゃう。サービス」
『ハハハ、んじゃその通り伝えておくよ』
その後、1時間もしないうちにユウからメールがきた。今は北海道へスノーボード旅行中で、お土産を買って行くから、という素っ気ない内容だった。例の件には一切触れていなかった。
私はメールで謝るつもりはなかった。謝るなら、顔を見ながらすべきだと思った。
ただ、何のお咎めも無いユウのメールを読み、「ただ友達の家にいただけ」、とか、そんな風に思ってくれてたら、という全く絶望的で浅はかな、一縷の望みをかけていた。