廃墟タイム-1
ケンジ、マユミ、高三の秋。
マユミがいつも学校帰りに自転車で通る銀杏の並木道沿いにある郵便局の角に、ケンジはそわそわした様子で立っていた。
マユミは彼の姿にすぐに気づいて自転車を降りた。「ケン兄、どうしたの? いきなりメールで呼び出したりして」
「いや、あのな、」
「どうしたの?」
「マユ、」ケンジは、マユミに近づいて、その耳に口を寄せた。「お、俺さ、」
「なに? なに?」マユミは微笑みながらケンジの顔に耳を近づけた。ケンジはマユミの頭に手を置いて、自分の方に引き寄せながら小さな声で言った。
「今日さ、部活休みで早く帰れるなーって思ったら、おまえを、その、急に抱きたくなってさ」
ケンジは顔を赤くして眉尻を下げた。
「やだー、ケン兄、いきなり何言い出すのかと思ったら……」
「でさ、俺さ……」
マユミはケンジの顔を見てにっこりと笑った。
「ケン兄、我慢できないのなら、あたしがお家でイかせてあげるよ」
「い、いや、そ、それも嬉しいんだけど、」
「どうしたの?」
「一度やってみたかったことが、その、あってさ」ケンジはもじもじしながら言った。
「何? どんなこと?」
「そ、外で、やりたい。おまえと……」
「外?」
「う、うん」
「こんな町の真ん中で?」
「ちっ、違うよっ」ケンジは一気に赤面した。「どっか人が来ない所でさ……」
「ケン兄ったら……」マユミも頬を赤くして恥ずかしげに言った。
「まだ外で裸になっても寒くないし、いいだろ? マユ」
マユミは少し考えて言った。「あたし、いいトコ知ってる。そこに行こ、ケン兄」
「いいトコ?」
「うん。ついてきて」マユミはいそいそと自転車にまたがって、ケンジを促した。ケンジも慌てて自転車に乗り、マユミの後を追った。
海棠ケンジ、マユミの双子の兄妹は、昨年、彼らが高校二年生だった夏に、お互いを想い合う気持ちを知り、なだれ込むように身体を求め合った。そしてその禁断の関係は今もずっと続いていたのだった。
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