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恋なんて知らない
【初恋 恋愛小説】

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恋しくてたまらない-2

そのまま二人で連れ立って歩いていると、前から若い女性が歩いてきた。

あれ、誰だろ…

制服を着ていなかったので練習試合等で訪れた他校の生徒かな、と思ったが、彼女が顔を上げて目が合った瞬間、はっとした。

少しさみしそうな眼をした、綺麗な人。

もしかして、と思った。
会ったこともないのに、なぜだか確信があった。

「な、菜美子さん…?」

「えっ。あれ、お姉ちゃん!」

伊藤さんは、どしたの、と言いながらその女性に駆け寄っていく。
私は自分の予想が当たったことで落ち着かない気持ちになった。

長い髪がふわふわ揺れるのを見る。
すごく大人の女性にも、幼い少女にも見える、不思議な魅力を持った人だった。

「そいえば、畑本ちゃんはお姉ちゃんに会ったことあったっけ?」

どきっ、とした。

「え、ううん、ない。」

「でも、菜美子さんって…」

「あ、偶然っていうか、もしかしてと思っただけで、たまたま。」

不思議そうな顔をする伊藤さんに、しどろもどろで答える。

「私のこと、知ってるの?」

菜美子さんがじっと私を見る。

綺麗な白い頬の上の丸い瞳が、まっすぐ私を見ている。

「あ、あの…お名前だけ、伺っていて、」

「高橋さんから?」

「えっ」

突然先生の名前が出て、咄嗟に答えに詰まる。

「いえ、違い、ます…。」

初めは先生が電話してるのを聞いてしまって、ちゃんと名前を聞いたのは伊藤さんからだから。

そんな風に自分に言い訳しても、菜美子さんの目は何の変化もなく私を見ている。

「あたしがお姉ちゃんの話ししたの。」

横から伊藤さんが助け舟を出してくれ、私は恐る恐る頷いた。

「ふぅん。」

菜美子さんは少し笑って、もう一度私を見た。


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