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真夜中の淫謀
【レイプ 官能小説】

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最終話 〜与えられた罰〜-6

「……どうして、わたしの邪魔をしたの?」

 エリナがトオルから離れ、真っ直ぐにみずきの前に立った。すらりと伸びた白い足、引き締まったウエスト、豊かな胸、整った顔立ち。どれひとつをとっても男たちが放ってはおかない完璧な容姿。肩にかかる黒髪が風になびく。

ふっくらとした唇から発せられるその静かな声は、強烈な威圧感でみずきを正気に引き戻した。黒々とした長い睫毛にふちどられた大きな瞳が強い視線でみずきを射抜く。目をそらすことができない。唇に塗られたグロスが月明かりをうけてきらきらと光る。

「もう一度、聞くわ。どうしてわたしの邪魔をしたの?」

「じゃ、邪魔なのはそっちじゃない!あんたさえ出てこなかったら、わたしは一樹くんとずっと一緒に入られたんだから! なのに、余計なことするから、だから、こんな……こんなこと……」

 エリナは少し目を細め、淡々と何かを読み上げるようにみずきに宣告した。

「わたしはまだ欲しいものを手に入れていなかったのよ。あなたのせいで、それは手に入らなくなってしまった。ねえ、『あなたのせい』よ。悪い子はおしおきを受けなくてはいけないの。わかるわね?」

「お、おしおき?馬鹿じゃないの?いったい何を……」

 エリナがみずきに向かってさらに一歩踏み出したとき、別の方向からどすん、と間の抜けた音が聞こえた。崖に沿って立つ大木の根元に、さっきまでそこに立っていたトオルが尻もちをつく格好で倒れていた。そのすぐ隣には、眉を吊り上げ、動物のように歯を剥いて怒りの形相を露わにしたマミが立っていた。

「トオルくん……騙したのね? わたしのことなんか、ほんとは好きじゃなかったのね? エリナのことが、あなたも」

 トオルが馬鹿にしたような冷やかな笑みを浮かべた。薄い唇が皮肉に歪む。尻についた泥を払って立ち上がり、マミに向かってうなずいた。

「あはは、マミもいたんだね。僕は君のこと、別に好きでも嫌いでもなかったよ。ただ、僕はエリナの役に立ちたかったんだ。エリナが君を抱けというから抱いた。一緒にいて機嫌をとってやるように言うから、その通りにした。それだけだよ。騙してなんかいないさ。僕に触られただけですぐにぬるぬるになっちゃうその体、ちゃんと好きだったから」

「ば、馬鹿にしないで……ひどい、ひどいよ」

 マミが爪を立てて、トオルの頬を引っ掻いた。長く伸びた爪は頬の皮膚を裂き、見る間にトオルの頬に出来た赤い筋から血が滴り落ちた。トオルがマミの両腕をつかんで地面に押さえつける。もがくマミの顔を、トオルはその拳で手加減無く殴りつけた。

「痛いなあ、そういうことするのやめてくれよ。まあ、みずきのおかげで僕の邪魔をする奴は消えてくれたし、僕はエリナと仲良くやることにする。ねえ、マミ。君も斎藤と仲良く崖の下で眠ってくれる? そうしたら、それはぜんぶみずきがやったことにして、僕らはいつもみたいにふたりで気持ちよく過ごせるんだ。ねえ、エリナ」

 楽しそうな笑いを含んだトオルの声に、エリナは答えない。ただ、トオルの背後の暗闇に向かって少し首をかしげて見せ、片手を挙げた。暗闇から、のそり黒い影が現れた。

「来てくれたのね。ありがとう」

「ああ、GPSって便利なモンだな。こんな山の中でも使えるんだもんなあ……おい、もうその辺でやめておけよ。女をやたらに殴っちゃいけない」

 黒い影は驚きで声も出ない様子のトオルの首に腕をまわし、あっさりと締め落とした。トオルは地面に顔をつけてぐったりと倒れ、マミはその影を見た瞬間、ひっ、と小さく叫んで気を失ったようだ。みずきの位置からは、まだ影の正体が見えない。ただ、低く落ちついた声だけが響いてくる。得体の知れない恐怖が足元から這いあがってくる。

「あの大塚とかいう男、生かしておいてもどうしようもないだろう。ちょっと実験台がわりに使わせてもらったが、よかったか」

「ええ、別にかまわないわ。必要ないもの」

「あの薬、思ったよりも即効性があってな。息をしなくなるまでに5分もかからなかった。あんまりまだ人間では使ったことが無かったんだ。で、このあとは?」

「そうね。もうトオルはいらない。この女の子はわたしの欲しいものを勝手に壊してしまったから、罰を受けなくてはいけないの。あとは好きにしていいわ」

「ふん、なるほどな。この崖下の死体だけが面倒だが……まあ、なんとかなるだろう。女はふたりとも飼育場に連れて行く」

 罰? 飼育場? いったいなんの話をしているのだろう。足の震えが止まらない。黒い影はざくざくと地面を踏んでみずきに近付いてくる。怖い。なんなの? いったいなんだっていうのよ!

 影が、顔を上げた。つるりとした白い肌。そこには髪も眉も無い。ただ、細く鋭い目の下あたりから首筋にかけて、大きく真っ赤なムカデが貼りついていた。男の表情に合わせて、ムカデが体をくねらせる。暗闇にぼんやりと浮かぶそれは、人間ではない、異形のものにしか見えなかった。

「いやあああああ!!」

 みずきはかすれた声で叫びながら、極限の恐怖の中で意識を失った。意識が暗闇に飲み込まれる直前、耳元で嘲笑うような声が聞こえた気がした。

『おまえの性根が腐りきってるのはわかってる。ふさわしい最期を用意してやるさ……』


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