全てをさらけ出す奥さま-1
「姫ちゃん、もういいよ。こっちを向いて」
オレが声を掛けると、彼女は体をビクッと震わせ て手の動きを止めた。しかし、しばらく経ってもその場を動かず、その内に小さく震えだした 。
「姫ちゃん?」
何か変だ…。そう思ってオレは 腰の痛みを無視して無理矢理起きあがり、彼女の顔を見るために移動をした。
「姫ちゃん、どうしたの?」
オレは俯いた彼女の顔を下から覗きこんだ。
「うっ!」
その瞬間に言葉を失ってしまった。
彼女は泣いていた。
「まだ、エッチな汁が溢れてるよ〜、シーツ汚しちゃうよ〜」
彼女は目から涙をポロポロ流しながら、溢れる愛液を止めようと手で押さえようとした。
「ひ、姫ちゃん、どうして…」
「姫美ね、姫美ね…、変なの…。初めてエッチした時から変なの。いつもエッチなことばかり 考えて毎日下着を汚してるの。エッチな汁が止まらないの。ごめんなさい…」
彼女はそう言った途端、その場に突っ伏して堰を切ったように泣き出した。
「わあーん、こんなんじゃ普通の奥さんに成れないよー、わあーん」
オレは知らなかった。彼女がそこまで悩んでいただなんて。
真面目な彼女は、性欲を抑えようとすればするほど深く考え込んでしまい、それがより大きな妄想につながり、どんどん悪循環に陥ってしまったようだ。
彼女の心が、ある意味清らかで真面目過ぎることが招いた結果だった。
可哀想に…。
オレはそんな彼女が、今まで以上に愛おしく思えてきた。
そして、これはオレの責任でもあった。妻になる女性の心の闇に気付かず、ただただオレに一身に向けてくれる清らかな笑顔と愛情を当り前のように享受するだけだった。
いや、それどころか天使の様な清らかな彼女と、SEXの時の淫らな彼女のギャップの差に興奮して喜んでさえいた。
まあ、成人男子としてそれはそれで悪い事では無いだろうけど、それについて彼女が悩んでいたことに気付かなかった罪は重い。
やはり新婚初夜に痛めたこの腰はそれに対するが天罰が下ったということか…
「変じゃないよ」
オレはそう言って腰を痛めた不自由な体に鞭打って、子供のように泣きじゃくる彼女の頭をよしよしと撫でた。
オレは彼女の溜まった悪い感情を吐き出させるために、それ以上声を掛けずにそのまま優しく頭を撫で続けた。
しばらくするとあやされた子供ように少し落 ち着いてきた。
オレは彼女に変じゃなく、とても素晴らしい女性である事を伝えようと彼女の手を取ろうとした。しかし、彼女は体を捩ってオレの手から逃れてしまった。
「だ、だめよー、姫美の手は汚れてるから、触っちゃだめ―――」
「何をバカなことを言ってるんだよ。どこも汚れてなんかない」
オレはそう言いながら悲鳴を上げる腰を無視して彼女の手を強引に取った。
「ヒック、ヒック、だめ、だめ…」
「姫ちゃんよく聞いて、変じゃない、姫ちゃんは変なんかじゃない。エッチなことを考えるのは普通のことだよ」
「姫美は普通じゃない…いつもだよ…」
彼女は俯いたまま心の内を語り出した。
「いつもエッチばかり考えているの。でもこんなエッチな子はいつか嫌われてしまうよね…ぐすん…」
「いつも?オレとの?」
「そうなの、一日中なの!我慢できないの!お願い、嫌いにならないで、お願いお 願い…」
彼女はそう言いながらポロポロと目から涙を溢れさせた。