私の死神様。-6
あれから一年が過ぎた。
「それでは、いまからねえちゃんの就職祝いをはじめま〜す。」
威勢のいい淳司の声に彩られ、京子と両親が活気付く。
「いや〜しかし京子があの一流企業に受かるとはな、父さん、正直驚いたぞ。」
「本当ね〜、まさか京子が就職なんて、夢にも思わなかったわ。」
「母ちゃんそりゃねえよ、京子姉ちゃんだってこの一年、がんばったんだから。」
家族に笑顔があふれる。母の無邪気な皮肉も、今はうれしい。
「だけど京子の採用理由はちょっと笑えたな。」
「ああ、それには俺も驚いたよ。姉ちゃん、あなたのその前向きな生き方がわが社に必要ですっていわれたんだろ?」
京子が照れ笑いを浮かべながらうなづく。
「ええ、そうよ。」
「なんか姉ちゃん、人が変わったみたいに明るくなったからな。」
「あら、それどういう意味?いままでのあたしは暗かったってこと?」
そんなことを話しながら、お互い笑いあうのだった。
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人は、弱い心があるからこそ、強くなろうと努力する。大切なのは弱い心を受け入れる勇気、そして自分と向き合うことのできる強い心。
もし、何もかもがうまくいかず、投げやりな気持ちになってしまったら、そのときは引きこもるのもいい。落ちるところまで落ちてみなければ、自分の弱い心に気づくことなどできないのだから。もし、弱い心に負けそうになったら、そのときは負けたっていい。無理して上辺だけ強がって自分を見失うより、もっと自分と向き合うことのほうが大切なのだから。
「就職は決まったし、次は結婚ね。」
物思いにふけっていた京子に、突然母が言う。
「け、結婚って、京子、おまえ彼氏ができたのか?父さん、初耳だぞ。」
「ちがうわよ、あなた。順番の話よ。」
「ああ、なんだ、そうか。」
家族に笑いがあふれた。京子も笑った。まるで天使のような笑顔で、京子は笑い続けた。
Happy End.