富子淫情-1
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―――京都御所から将軍御所に戻った富子。
彼女はそこで自分が身籠ってたことを知る。
そうして月は満ちていき、富子は無事に男子・春王を出産した。
後継者を産むという自らの大願を成就させた富子だったが、
“出産"という緊張から開放された時に
富子の中には何か漠然とした“空虚感"が残っていた―――
日が経つにつれて、
富子自身が“空虚感"の正体を本能的に察するようになっていた。
(・・・あの時、主上と上皇様との・・・・)
彼女が京都御所に留まっていた数日間、
帝と上皇を交えて繰り広げられた“淫欲の夜"。
あの時の“快楽"は
富子の身体の隅々そして内奥にまで しっかりと刻み込まれ
それから離れた生活を送る中で
再び身体がその刺激を欲している。
そう考えると
何故か富子の手は自然と下腹部に伸びる。
裳裾の裾を割っていくと そこにある“果肉"は既に熱とぬめりを帯びていた。
(・・・何てはしたない。天下の将軍御台所が・・・男を欲して悶えるなど・・・・・・)
夫である将軍義政は生まれたばかりの息子には喜色満面で相手してくれるが、
妻である富子とは以前として不仲な状態にある。
或いは薄々と春王が“自分の息子ではない"と察しているのかもしれない。
(・・・ああ、もう気分が晴れぬ・・・・そうじゃ、久しぶりに嵐山に参ってみよう。
あそこならば、息抜きにはちょうどよいやも知れぬし・・・・)
嵐山は京の都の北西に位置し、夏は緑一色・秋は紅葉で知られている。
また桂川の上流に位置していることもあって、涼しさを醸し出す空間でもあった。
そんな環境と空間でもあることから、
名だたる貴族や有力大名の別荘も点在していた。
夏の暑い盛りでもあり、
“息抜き"と“涼み"には
絶好の場所とも言える地域であった―――――