富子淫情-3
―――サァァァ・・・・・
「御台所様!!どうぞ こちらへ!!輿にお戻り下さい!!」
突然降ってきた小雨に、 富子の遥か後方にいた供の者が慌てて駆け寄ってくる。
まだ大雨、といえるものではないが、
富子の身体は頭の先から足元までびっしょりになってしまった。
「この雨は暫く続きそうね、どこか雨宿りできる場所があればいいのだけれど・・・・・」
侍女に着物についた水気を拭ってもらいながら、
富子は輿の中から周囲の山々に目を走らせる。
富子自身嵐山に来るのは少女時代以来のことなので、地理について詳しいとは言いがたい。
このまま将軍御所に戻るにも身体は濡れすぎたようだ。
ここで富子の目に
西の方・山の麓の木々の中に埋もれるように佇む、
“ある邸宅"の姿が映った――――