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富子淫情
【歴史物 官能小説】

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富子淫情-18

「右近から貴女が我が別荘にお忍びで来られたと聞いて、
わしは信じられぬ思いでした。
ですが、こうして輿を急がせてやって参ったのですよ・・・」



兼良の言葉を聞いて、富子は漸く気づいた。
入浴中の富子を覗いていた人物は兼良であり、

それから夕食までの間に 右近が姿を見せなかったのは兼良と密かに話し合っていたからなのだろう。



「御台殿、わしは長らく貴女を想っていたのですじゃ・・・・。

数年前に将軍主催の歌会で初めて貴女を見た時から・・・。

貴女のような若さで、妖艶さと官能を併せ持った女性は、宮中にもおりますまい・・・。

帝も貴女を間近で見れば、きっとわし同様に魅了されてしまいましょうな」



既に帝とも身体を重ねている富子には、兼良の言っていることが分かる気がした。


「・・・たった一度で良い。たった一度、貴女を抱くことができるならば・・・老い先短いわしは思い残すことはないのです。」



先程まで富子と右近の情事を盗み見聞きしていた余韻が残っているのか、

兼良の口調はどこか早口で高い調子だった。



「浴室で垣間見た貴女の白い裸体・・・。

そして右近との情事・・・これらを垣間見るだけで
老いさらばえた老骨にも血が巡ってきた・・・・。


右近には機会あれば貴女を誘惑し、その情景をわしに見せることを命じましたわ。

お陰でわしの欲望は今までに高まっておりますぞ。


・・・右近の方も、余程御台殿に惚れきってしまったようですぞ。

我が命とはいえ、天下の御台所を相手にするのですからな。相応の覚悟が入り申そうに。

・・・もっともわしの方が想っていた期間で言えば長いですが・・・・」



兼良の言葉が右から左へ聞き流される中で、
富子はある意味“嬉しさ"を感じていた。
動機と目的はどうあれ、
この右近は主人よりも富子の方を優先してくれたことに。


頬や唇に生暖かい息づかいだけを感じるだけで、
はっきりと右近の顔を見られないのが辛い。

富子は正直そう思っていた。





「さてさて、貴女の供回りの者は食事に仕込んだ薬を一服、よく寝ておりますぞ。

これで心置きなく貴女に触れられる・・・」


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