富子淫情-17
「富子様、今幸せでございますか?」
「・・・・ここに来て、こうして貴方に出逢うまで
私の中は悶々としたものが溜まっていた感じ・・・。
でも、貴方のお陰でそれが消え去ったわ。
これこそ、女としての幸せというのかしらね・・・」
「その幸せを・・・富子様のお慈悲をもって分かちあっていただきたいのです。」
「・・・?」
一瞬富子は彼が言っている言葉の意味が理解できなかった。
その時だった。
今まで右近との情事に熱中していたために気づかなかった“視線"に気づいたのは。
( !!! )
浴室にいる富子を覗き見た視線と同じ。
富子が思わず身体を起こしかけた時、
右近は両腕でがっちりと富子の上半身を抱え込んだ。
その時の勢いで、富子の中に収まっていた肉棒が抜け落ちてしまったが。
「う、右近・・・・」
「富子様、我が主人・兼良でございます。共に幸せを分かち合いと望んでおられる方です」
「兼良卿が、ここに・・・?」
その言葉と共に、
三方が障子の寝間で唯一の襖がスゥーッと開き、
薄暗い空間の中に
新たなる黒い人影が入ってきた。
「一別以来でございます、足利の御台殿。
一条兼良でござる、お忘れになってはおりますまいな?」
忘れるわけがない。
姿は見えなくとも、
今まで御所や歌会の場で何度も耳にした聞き覚えのある老人の声。
低い調子ではあるが、
興奮しているのか どこか上ずったように聞こえる。