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〈四季の舘〉祈り〜櫻並木の唄〜
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〈四季の舘〉祈り〜櫻並木の唄〜-9

「お姉さまは未だしも、夏姫様が?」
七穂さまが、驚いて夏姫様を見る。
「面白そうだったもの」
ーそんなんで決めるのか・・・。
 夏姫様という人は、良く分からない。

「絢華、こんなトコにいることはないわ」
行きましょう、と袖を掴まれた。
「あら、七穂。絢華ちゃんはお手伝いに来たのよ。あなたの独断で連れていかないでね」
春姫様がやんわりとたしなめる。
「まあ、あなたが絢華ちゃんの姉なら話しが別だけど。違うなら、文句を言わない」
七穂さまが、ぐっと言葉に詰まる。
「あっ、あの、私・・・」
慌てて二人を止める。
「絢華は、黙っていて」
七穂さまに遮られた。
「『絢華』と呼び捨てで呼んでいるのに、妹にしないのは何故?」
「それは・・」
 七穂さまが言いすくめられる所を初めて見た。
「怖いから?重荷を押し付けるようで。・・・意気地無し」
「春姫様!!」
たまらず声をあげてしまった。
ーだって、これじゃあ七穂さまが・・・
「絢華ちゃん、これは姉妹の問題。あなたは口出ししないで」
「でもっ、」
「絢華!」
七穂さまの強い声に、びくっとした。
「お姉さまの言う通りよ。口を挟まないで」
ーそんな風に言われると、なにも言えなくなってしまいます。

「何故私なのですか?ー・・夏姫様も妹は居られないのに・・」
「私は、妹にしたい人に会っていないもの」
律儀に夏姫様が返す。
「あなたには、絢華ちゃんが居るでしょう?何が不満なの」
春姫様の攻撃は止まらない。
「不満など・・・」
ー七穂さまっ!!
 何かがぷつんと切れた。
「春姫様っ、もう止めてください!!」
 涙が出てくる。
「絢華ちゃん?」
皆が、驚いたように私を見る。
「ごめんなさい、七穂さま」
「絢華・・・」
「これ以上見ていられません。春姫様、私と七穂さまは姉妹ではありません。それがいけないというのなら、私が七穂さまから離れます。だから、」
じっ、と七穂さまを見る。
「喧嘩をしないでください。それじゃあ、ごきげんようっ」
ばたばたと舘を出る。
「絢華っ」


「七穂」
お姉さまが、私を見る。ーさっきまでとは違う、優しい顔で。
「分かっているでしょう?」
うなずく間もなく、駆け出した。
 大切な、『妹』の元へー・・





「ー・・っ」
ぽたぽたと涙が落ちる。
ー私は、あんな七穂さまを見たかったんじゃない。笑顔で居て欲しかったのに。
「・・私のせい・・」
私が、七穂さまの側にいるから困らせてしまった。
「・・・っあ」
もっと側にいたかった。もっと声を聞いていたかった・・。

「絢華っ!!」

 一番聞きたかった声が、後ろからした。
「七穂さまっ!?」
驚いて、振り向く。
「よ、よかっ、た。・・間にあったわね」
ふふっと笑う。
「七穂さま・・・」
何故?


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