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〈四季の舘〉祈り〜櫻並木の唄〜
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〈四季の舘〉祈り〜櫻並木の唄〜-2

 ーこの高等部には、春夏秋冬の名前を持つ人達が居るんだ。(姫(ヒメ)と言われている)この方達が学校を運営する、いわば生徒会みたいな感じになっていて、その妹達は、その季節の植物の名で呼ばれているー
その内の一人、紅葉姫さまが、千香子さんの『お姉さま』。


「あぁ・・・」
それにしても、まだあまり人が通ってない桜の花びらの絨毯で出来た道の綺麗なこと。うっとりしてしまう。
「通るのが、もったいないなぁ」
 という訳で、爪先立ちで歩くことにした。
踏まないように、恐る恐る一歩を踏み出す。と、
「何をしているの?」
後ろから涼しげな声がした。
「えっ!?ー・・うきゃっ」
驚いて後ろを見ようとしてバランスを崩してしまった。
べちっ、と小気味良い音が響く。
「イタ・・・。っあああっ!!」
桜が無惨にも潰れている。ショックだ・・。
「・・・・本当に、何をしているの?」
戸惑うように、話しかけられる。
「え?あっ、いいえっ。何もありませんっ。ごめんなさいっ」
相手が上級生と分かり、慌てて立ち上がる。
ー恥ずかしいよぉ。

穴があったら入りたい気分だ。
「すいませんっ。何でもありませんから、気にしないでくださいっ。では、ごきげんようっ」
早口で喋り、走って逃げる。
「えっ?ちょっと、」
あなた、と後ろの声を無視して駆けていった。


「つ、疲れたっ」
走り続けること数分、お聖堂の前に着いた。ーごめんなさいっ、マリア様。走ってしまいました・・。
 まさか見られていたとは思っていなかったのです。
少し落ち着き、後悔する。相手は先輩だったのだ。私のさっきの行為は、流石に失礼だ。

「誰だったんだろう」
焦っていて、顔を良く見ていない。
朧気に覚えているのは、とても白い肌とパーマがかかったような、ふわふわとした長い髪。校則でパーマは禁止されているから、天然物だろう。綺麗な人だった気がする。

「まぁ、もう会わないと思うし、」
いいか。と思う。
 あんなに綺麗な人なら、妹になってもいいな。


「ごきげんよう。絢華さん、何をしているの」
ふいに腕を引かれる。
「ぅえ?っひゃっ!」
ぱしゃっ、とカメラの音。
「咲子さんっ、何をするのっ」
怒って、音の主を見る。

 岬 咲子(ミサキサキコ)。写真部に所属している、カメラ命の少女。短い髪を、上で二つに結んでいる。
「ナイスショット、絢華さん。制服、どうしたの?」
笑いながら話しかけてくる。
「え?・・・あ゛っ」
言われて気付いた。さっき転んだときに着いたのだろう、桜の花びらが沢山付いている。
「題。『桜と戯れる少女』」
ぱしゃぱしゃっとシャッター音が続く。
「咲子さんっ!!」


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