バッドエンドロール-4
「好きな人との橋渡しなんて大事なこと、ちゃんと名前も知らない人に頼むもんじゃないと思うけどなぁ」
彼女のグロスで彩られたくちびるが、ふるえては何か紡ごうとして、何度も開いては閉じる。
怯えるみた いに。
何を言っても取り繕えないことわかってるんだね。
でも、手加減なんてしてあげない。
私だって翔が好きだ。
あなたよりずっと、ずっとずっとずっと、壊れそうなほど翔が好きだ。
だからあなたを傷つけたって構わない。
あなたが翔のお姫様になれるチャンスなんてかけらひとつも、絶対にあげない。
「これからは間違えないでね?あぁ…でも、もう呼ぶことなんてないから大丈夫だね、じゃあバイバイ」
明るい声と笑顔で決定打を残して、ゆっくり立ち去る。
慌てたり隙を見せたらつけいれられる。
何を言われたって振り向かない。
振り向いてあげない。
彼女はたぶん私を呼ぼうとしては躊躇してる。
でも私だって傷つい たんだから、できるだけ上手に傷つけたい。
もうこれでこの子は翔を諦めるか後ろめたい恋をするしかないもの。
だって切り札は私が持ってる。
私が一言、先の事実を翔に告げるだけで彼女の恋は粉々になるしかない。
粉々になるまでにいかなくても、好きな人に呆れられるだろう要素をもったまま、恋をし続けられるほど、つよい子はそうそういない。
それだけの自負が私にはある。
幼馴染みとしてしかあれない私の唯一の勝負札だ。
翔を好きな女の子たちにとって、私は名前を覚える価値もない、ただのステップアップに使う脇役と同じなんだろう。
でも私だって人間だ。
名前を間違えられたら地味に傷つく。
何度そうやって傷ついただろう。
地味な傷でも繰り返したらえぐれて死んじゃうんだよ?