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胡桃の殻を割るように
【片思い 恋愛小説】

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バッドエンドロール-3

『なんで貴女なんかが何もせずに翔の隣にいられるの』そう瞳の奥の剣呑さと嫉妬の炎が語ってる。


何度見ただろう。
この目の色。
心が凍りそうにつめたい目。
どんなに表面は愛らしくても心のなかで敵意がある限り、きっと私が翔を好きな限り、敏感に感じとってしまうものがある。

だからわかる。
呼び出されて、協力を頼まれて、…断る。
それだけでガラリと変わる雰囲気を何度味わっただろう。

ハッキリ面と向かって『釣り合わないくせに』『ふさわしくないのに 』そう言われたこともあるし、叩かれたことだってあるから、もう思い知ってる。



翔を好きな女の子たちにとって、私は邪魔で仕方ない。
でも手札になれば最高の駒なんだろうから。


この子も私をキューピッドなんて可愛い名前の、ていのいい便利なステップにしかみてない。


決めつけすぎ?

ひねくれてとらえすぎ?



残酷だけど証明できるよ、私。


「…ねぇ、私の名前わかる?したの名前」
「え、…アンズ先輩、でしょ?」
「翔が私のことアズって呼ぶの知ってるんだね」
「……それは、だって」
「ふーん、」

翔を好きな女の子たちはそんな親しみが羨ましいから、みんな知ってるしみんなそう答えるの。


もう何度目だろう、答えあわせをしてあげる。

もちろん笑顔で。

彼女たちが嘲りと見下しのみどりの目を隠した一見可愛い笑顔で私を傷つけるから、いつからか始めた自己防衛。

ううん。

試してるの。

あなたが本当に王子様にふさわしいお姫様なのか。
おとぎ話の悪い悪い魔女みたいに。

ハッ ピーエンドに試練は付き物でしょう?



だから、ね。
すこし意地悪な罠をしかけたのわかるかな。

それは笑って教えてあげるのがいちばん効くんだって知ってる。


彼女たちがうまく私を傷つけるなら、私だって上手に傷つけたい。


「私、アンっていうんだよ。アズもアンズもあだ名」


そう彼女に笑いかけた途端、ぽかんと隙のなかった可愛い顔が歪んで、次の瞬間色をなくす。


あーあ。
賢い子だったんだね、だから、わかるよね。
私の言いたいこと。



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