バッドエンドロール-2
「先輩って、翔先輩と幼馴染みなんですよね」
「あー…うん」
名前も知らない女の子とふたりで校舎裏。
言葉とリボンで後輩だとはわかるけど面識はない子だ。
上履きのまま強引に連れられたせいで湿った土がこびりつく感触がきもちわるい。
ぐしょぐしょした汚い感触。
それは私の恋心が形になったみたいで、場違いに滑稽だった。
でももっと滑稽なのはこれから起こる、茶番劇だ。
これから起こる流れが簡単に読める辺り、だてに翔の幼馴染みやってないなと冷めたとこにいる自分がへんに感心する。
「あたし、翔先輩のこと好きなんです」
「そう、なんだ」
やっぱり冷めてるな、私。
返事つめたすぎたかな。
ちょっと後悔したけど、でもたぶんこのぐらいじゃ怯まないのをもう私は知りすぎていたから、そんな後悔、すぐに飛んでいった。
もう何度繰り返しただろう。
女の子は入れ替わり変わるのにみんな言うことは同じ。
「協力してもらえませんか?」
ほらね。
どの女の子もいっしょ。
その後の言葉もわかるよ。
「あたしなら翔先輩に釣り合えると思うんです。ふさわしくなるために努力もしてきました」
彼女のうるんだ大きな目。
長く影を落とすまつげ。
さらさらの手入れされた髪。
控えめな守ってあげたくなるような笑顔。
自然な癖に一分の隙もないナチュラルメイク。
全部味方なんだろうな。
完璧に『女の子』をしててそれが嫌味じゃない。
それでも恋する可愛い女の子たちはその言葉の裏側を隠せてない。
暗に言ってるの、わかるよ。
あたしなら釣り合える。
それって遠回しに……でも確実に『貴女じゃ釣り合わない』って言葉と同じ意味なの、わかってる?
ふさわしくなるために努力もしてきました。