卒業式の前に-4
コーヒーとポテトを二人分買ってヒロキが戻ってきた。大きな手が、わたしの手からハンカチを奪い取る。
「ほんとに泣いてんのかよ。また友達と喧嘩でもしたのか?」
「違う、そんなに喧嘩ばっかりしてないし」
「じゃ、どうしたんだよ」
心配そうに見つめるヒロキの目。ハンカチを返してくれた後、その手がわたしの頭の上にのせられる。体温が伝わってきて、そこだけほんわかと温かい。
「もうすぐ、卒業だから。みんなばらばらになって、寂しいなって、思ってた」
「なんだ、そんなことか」
「ヒロキも、行っちゃうでしょ?遠くに」
「え?ああ、でも東京なんてすぐそこだろ」
「そうだけど、でも遠いもん」
「なに?そんなに俺と離れるのが寂しいの?」
違う。そうだけど、違うと思いたい。言葉に詰まって、またわたしの目からはぼろぼろと涙がこぼれ出す。
「わわわ、ちょ、泣くなって。俺が泣かしてるみたいに見えるだろ」
「だって・・・涙が出てくるんだから、しょうがないじゃない・・・」
「わかった、そしたらちょっと面白い話をしてやろう」
ヒロキがコホンと咳払いをする。わたしの頭をゆっくり撫でながらヒロキは続けた。
「俺さ、卒業したらできるだけ早く結婚しようと思うんだ」