投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

卒業式の前に
【青春 恋愛小説】

卒業式の前にの最初へ 卒業式の前に 2 卒業式の前に 4 卒業式の前にの最後へ

卒業式の前に-3

 あの店っていうのは、いつも帰り道に寄るハンバーガーのチェーン店。2階の窓際の席が気に入っていて、ふたりで行くときはいつも同じ席に座る。

「じゃあ買ってくる。コーヒーと、あと何がいい?」

「ポテトのMが食べたい」

「おまえポテト好きだよな。そんなもんばっかり食ってたらデブになるぞ」

「うるさいなあ、ヒロキがガリガリ過ぎるだけでしょ」

「ちょ、俺はガリガリじゃないぞ!筋肉で引き締まってるだけだからな。なんなら脱いで見せようか」

 ヒロキが真顔でネクタイをゆるめ、シャツのボタンを外そうとする。わたしは焦って思わず立ち上がった。

「こ、こんなとこで何やってんのよ!やめなよ!」

「ひひ、こんなとこで脱ぐわけないだろ。チイって何でも真にうけるから面白いよな」

「馬鹿、馬鹿!!さっさと買ってきてよ!!」

 ヒロキの背中をバシバシ叩く。笑いながらレジに向かうヒロキの後ろ姿を見て、もしかしたらふたりでこの店に来るのも今日が最後かもしれないな、なんて思ってまた悲しくなる。

 この店の2階からはすぐ下の商店街が見下ろせる。学生の多い街だから、お店もやっぱり10代とか20代の子向けのお店が多くて、雑貨屋さんも洋服屋さんも見て回るだけですごく楽しい。

 友達と一緒に買い物に行くより、ヒロキと一緒に行く方が多かったな。洋服とか靴とか買う時に、どっちがいいか迷ったらヒロキはパッと決めてくれる。いつも『チイにはこっちが似合う』ってきっぱり言ってくれる。わたしもヒロキのものをよく選んであげた。放っておいたら無駄に高いものとか買おうとするんだもの。『おまえは俺のお母さんかよ』とか言われたこともあったっけ。

 リクルートスーツだって、卒業式に着る袴だって一緒に選んでくれたのに。もう、あんなこともできなくなるのかな。

 窓の外の景色が涙でぼやけてしまう。あわててハンカチで目をおさえる。


卒業式の前にの最初へ 卒業式の前に 2 卒業式の前に 4 卒業式の前にの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前