「こんな日は部屋を出ようよ」後編-14
「……だから、ルリは別の考えがあって行動しているんだ」
正当性を唱える僕を、友人のため息が遮った。
「おまえは……本当に人間ってものを知らないな」
「ど、どうしてだよ?」
「それは、従妹がおまえに親しさを感じてるからこそ、心を裸にして接しているんじゃないか」
予想もしない内容で、反論してきた。
「だって、ずっと僕に辛辣な言葉を……」
「それも同じだって。好意があるから、厳しくなったりするんだ。
その前は、ずっと無関心だって嘆いてたじゃないか」
「で、でも、僕と一緒の時だけ煙草を喫うって、僕を困らせて……」
「額面通りに受け取ってやれ。あの位の年頃だから、おまえの真似をしたかったんだろう」
いつの間にか、友人の声が笑っている。
「おまえに、最後のアドバイスをやるよ」
「えっ?」
「今から、従妹に謝ってこい」
「ど、どうして……?」
「どうしてとか疑問を持つんじゃない!行けば分かる。自分のしたことが……」
電話は一方的に切れた。
僕は、切れた後も、暫く携帯を見つめていた。
友人のアドバイスが、気になって仕方がなかった。
もし、彼の言う通りなら、僕はとんでもないことを仕出かしたことになる。
「こうしちゃ居られない!」
時刻は四時半。僕は、大慌てで出掛ける支度を始めた。
洗面を済ませ、服を着替え終えて、玄関を勢いよく開けた。
「なッ!」
今、まさに、飛び出そうとした瞬間、目の前にルリが立っていた。
「……こんにちは」
「こ……こんにちは」
──何故、此処に?というより、呆気に取られてしまった。
「何処に、お出掛けですか?」
以前にも増して、冷たく、抑揚のない仕種。
「君の家に……君に用があってね」
「だったら、手間が省けましたね。わたしも貴方に用があるんです」
冷たい表情が、いたたまれない。
僕への恨み辛みをぶちまけに来たのか。それとも暴力か。何れにしろ、徒では済まないだろう。
「上がってもいいですか?」
「あ、ああ……」
しかし、考えてみれば仕方のないことだ。
友人の言う通りなら、僕の勘違いから彼女は疵ついた訳で、仕打ちを甘受せねば謝罪とはならない。
僕はルリを家に上げた。
「また、そこですか?」
「えっ?」
それは、リビングに招こうとした時だった。