終わりのない恥辱-3
「ねえ、マミ。もう叩かないから、そんな目で見ないで。マミがこんな目に遭ったのは全部エリナのせいなのよ……わかる?一樹くんにエリナがちょっかい出したりしなかったら、わたしだってマミだってこんなふうにならずに済んだのよ」
「エリナ……の、せい」
「そう、おかしいよね。わたしたちがこんなに苦しんでるのに、あの子だけ一樹くんと幸せにいられるなんて。一緒にエリナに仕返ししようよ。あの子が全部悪いの」
「仕返し……」
「そう。今度のレースのとき、いっぱい嫌がらせしてやろうよ。大塚と男たちの相手もたっぷりさせてやるわ。うふふ、楽しみね」
話しながらみずきは笑いが止まらなくなった。反対にマミは震える声で怯えた表情のまま、首を横に振った。
「わ、わたし、そんなこと……」
「できない、なんて言わせない。だって『友達』でしょ?わたしの言うこと聞いてくれなかったら、このデータ、全部トオルくんに見せるわよ?いいの?」
「いや、やめて!それだけは……だって、やっと上手く行き始めたところなのよ。彼のこと、本当に好きなの、そんなもの絶対に見られたくない!」
「じゃあ、わたしの言うこと聞いてくれるのね?」
マミが諦めたように頷いたとき、片手に毛布を抱えた大塚が戻ってきた。裸のマミに毛布を被らせ、車に乗せる。マミのアパートまで連れて帰る道すがら、大塚は何度もマミに「誰かに余計なことをしゃべったら殺すからな」と脅しつけていた。昨日の夜、待ち合わせ場所ではあんなに幸せそうな顔をしていたマミ。もうそんなものは見る影も無い。すべての希望を奪い去られたような目をして、ただ「ごめんなさい、ごめんなさい」と繰り返すその姿は、みずきの心をチクチクと突き刺した。
とんでもないことをしてしまったのかもしれない。どうして、わたしこんなこと……
わずかに残された良心が痛み始めるのと同時に、大塚に初めて犯された夜がフラッシュバックする。あの夜の苦しみ、屈辱。そして、飲み会で見たエリナたちの楽しそうな姿。マミの電話越しにも伝わってきた楽しそうな声。あれもこれも。
そうよ、わたし、悪くなんか無いわ。全部エリナが悪いの。エリナが悪い、エリナガ悪イ、エリナガワルイ……
マミをアパートの部屋まで送り届けた後、車に酔ってしまったから歩いて帰ると言って大塚と別れ、みずきはひとりで日曜の街を歩いた。とにかくひとりになりたかった。