買われる欲望2-1
シャワーの音が聴覚的に官能を揺さぶる。
部屋に残された加藤はうなだれながら曇りガラスの浴室に目をやった。
影に浮かぶ豊かな膨らみと腰の張りは、先程まで自分の男根を慰め欲情していた女のものだ。
金で買われるという冷酷な被虐に悶えていた清子は、自分が達すると同時に慈悲深い優越に恍惚とした。
欲望は精算されてしまったのだ。
加藤はそれがなんとも汚らわしく、浅ましく思えた。
優越を悟った女を欲情させたい―
加藤は精算できなかった情を抱えて浴室の扉を開いた。
「きゃ、ちょっと・・・・」
湯気の向こうの隠しきれない魅惑的な体が加藤の劣情を煽った。
「僕も、シャワーを。」
抑えた声で加藤は言う。
「そうですか・・・、じゃあお湯どうぞ」
そういって清子は温度を確かめたあと、加藤にノズルを渡した。
「ありがとう」
加藤はただそう言うと、清子の頭にシャワーの口を向けた。
「ん・・・ちょっと・・・」
清子の顔を狙うような流水が、清子の呼吸を許さない。
「はっ・・・はっ・・・・」
隙を見つけるように息を継ぐ清子は加藤の加虐心をくすぐった。
「は・・・・ひどいです・・・・」
息を上がらせ涙で乞う清子の目は、恐怖の色をにじませている。
「ごめんね」
加藤はビジネスライクな譲歩を見せる。つかの間の、見せかけだけの安堵を与える。
「もう・・・」
と逃げ腰に出ていこうとする清子を加藤は捉え、激しく舌を入れた。
「んっ・・・」
清子は嫌がりながらも、ようやく満たされた女の悦びに溺れる。
息ができない―
加藤は荒々しく暴れた舌を清子から離すと、そっと触れるように首元に舌を這わせた。
「はうっ・・・待って・・・」
清子は女が満たされていく感覚にしびれながらも、契約とは違う内容に混乱していた。
「何?」
加藤は変わらぬ声で囁く。
その囁きですら清子を疼かせる。
「聞いてないです・・」
控えめに清子は言う。あくまでそっと探るように。
「言ってないよ」
加藤は手のひらで清子の乳房の頂点に手をあてがうと、円を書くようにゆっくりと動かした。
泡で濡れたそこは、加藤の手を追うように、また逃れるように翻弄される。