あやなくもへだてけるかな夜をかさね-4
ベッドルームに入った智子は、鏡に向かいながら化粧水をはたく。
夫は食事を終えると、テレビの前に寝ころんだ。
ニュースとスポーツが終わるまで、夫が動く事は無いだろう。
智子は、先にお風呂に入るね、と声をかけてリビングを出たのだった。
鏡に写る自分の顔を見ながら深く溜め息を吐く。
鏡の中に写る女は、疲れた表情をしていた。
「あらやだ…こんなところに…」
生え際に一本の白髪を見つけ、智子は手を伸ばし白髪を抜く。
形にならない焦りと憂鬱が智子を襲っていた。
この部屋で、ベッドの上で最後に夫に抱かれたのはいつだっただろう。
思い出さなければいけないほど前の事だったのだろうか?
夫とはセックスレスと言うわけでは無かった。
時たまに、思い出したように夫は智子に手を触れた。
しかし、パジャマを脱ぐ事もなく行われるその行為は、情熱と呼べるようなものはどこにも無く、愛撫もそこそこにお互いショーツとトランクスだけを脱いで行われた。
例えるなら排泄。例えるなら入眠儀式。食事や入浴といった生活の中の当たり前の行為のように行われた。
昔、二人が恋人同士だった頃のような、情熱に溢れお互いを食べてしまいそうなほどの愛に満ちた行為とはかけ離れたものだった。
智子は、自分がこのまま年を取り、夫にとって女として見られる事が無くなってしまうのだろうか…と、寂しさに胸が押しつぶされそうになるのだった。
ベッドに入ってからも、智子はなかなか寝付けずにいた。
体の芯の部分では眠りを求めているのだが、妙に頭が冴えてしまっている。
右に左に身を捩っていると夫が入ってきた。
「なんだ、まだ起きてたのか?」
智子と視線が合い、驚いたように夫が言った。
「うん…眠れないの…」
…誘ってみようか?…不意に智子の心に沸き上がる想い。
「そんな時もあるさ」
夫は、意外にも優しい眼差しを智子に返した。
今日は昔の二人を思い出した事もあり、夫の眼差しの中に、若かった頃の甘い想い出が重なる。
「…ねぇ…」
「ん?」
「………しない?」
夫は、少し眉を上げ驚いた表情を見せたが、
「どうしたの?明日辛くなるよ」
その表情は笑っていた。
…拒まれてはいない…
智子は、心底安堵した。
智子の横に体を滑り込ませるようにベッドに入った夫の腕が、智子の肩を抱く。
体の中から不意に熱いものがこみ上げ
「ふ…ぅ…」
吐息がこぼれる。
左手で肩を抱き、右手が胸の上に乗る。
パジャマの上からクシュクシュと乳房を揉まれ、智子の中にはがゆい思いがこみ上げる。
…直接触って欲しい…
手のひらいっぱいに乳房を掴んで、揉んで欲しい…
指の間から、形を変えた柔らかな肉が溢れるほどに…強く弱く揉みほぐして欲しい…
そして、頂点にフルフルと揺れる固いしこりを啄んで欲しい…
智子の切実な願いをよそに、夫の手は虚しく乳房を離れ、パジャマのズボンの中に滑り込んでいった。
乾いた割れ目を沿うように指が動く。
「ん…んっ」
智子の眉が寄る。
乾いたそこに指が擦れて、少し痛い。
…もっと優しくして…
言葉に出来ない想いを伝えるように、智子の手のひらが夫のペ○スを撫でる。
パジャマの上から、優しくサワサワと撫でるようにペ○スを愛でてゆく。
パジャマ越しに伝わるペ○スの感触が形を変えたのがわかると、智子の手が直接ペ○スに触れようとトランクスの中に入り込む。
まだ完全に勃ち上がってはいないそれを、愛おしむように手のひらで包み込み、優しく上下させる。
クチュ…クチュ…
智子の割れ目から潤んだ音が聞こえだす頃、夫のペ○スも固く勃ち上がってきた。
夫は、パンティの中から不意に手を抜くと、パジャマごとパンティを引き下ろし、智子の下半身を剥いた。
「は…ぁぁ…」
智子は喉の奥から振り絞るように吐息を落とす。
夫は、自らパジャマとトランクスを降ろすと固く勃ち上がったペ○スを智子の秘所にあてがい、一気に“グイ”と突き立てた。
「あうっ」
行き場を無くした智子の腕が、ゆっくりと宙を舞い、戸惑うように夫の肩を抱く。
「んっ、んっ、んっ」
夫が動きを早める度に、智子は自分の気持ちが冷めてゆくのを感じていた。
自分から誘った結果とはいえ、あまりにも虚しくはないか?
夫のペ○スを放出させるのは、智子の秘所で無くてもよいのではないのか?
智子の手のひらでも、あるいは夫自身の手のひらでも…。
冷え冷えとする心を隠そうと、智子は己の秘所に意識を集中させた。