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うさぎ
【ファンタジー その他小説】

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うさぎ-3

 今朝も大きな桜の木の下で、母親うさぎたちの井戸端会議が始まりました。子育ての悩みに、誰かさんの夫の浮気、ご近所の噂話まで、話題に事欠くことはありません。あらやだ、そんなことがあったのね、なんて言いながら、ほんのひととき桜の下でおしゃべりを終えた母親うさぎたちは、いつでも満足げな表情でそれぞれの家庭へ戻っていくのです。ささやかなストレス発散法といったところでしょうか。

 ところが、その輪の中に一匹だけ加わらない母親うさぎがいます。メスにしては大きな体を持ち、茶色いふさふさとした茶色の毛、真っ黒な瞳。彼女はいつでもひとりで行動します。

決まった夫を持つわけでもなく、生まれた子供に対しても最低限の生きる術だけを叩きこみ、あとはなにひとつ強制せずに好きなようにさせるという彼女なりの教育方針は、子育てこそ生きがいだと信じている他の母親うさぎたちの神経を少なからず逆なでしました。

「あなたの子供はみんな好き勝手なことばかりして、みんな迷惑してるわよ」

 そんなふうに苦情を言いに来る母親もいます。彼女は自慢の長い耳をピンと伸ばして真ん丸な目で相手を見つめてこう返します。

「うちの子は他人に迷惑をかけたことなんて無いよ。ただ自由に生きているだけさ」

「それが困るのよ、この前もあなたの子供がキリンと遊びたい、なんていって湖の向こうの森まで行ってしまったでしょ?うちの子も行きたいなんて駄々をこねて大変だったのよ」

「・・・いいじゃないか、行かせてやれば」

「何言ってるのよ!!あそこには小賢しいサルたちも、恐ろしいライオンたちもいるのよ?あんなに危険な場所、わたしだって一度も行ったことないわ。子供に何かあったらどうするのよ!!」

別のうさぎも横から叫びます。

「アナタの家の子供たち、みんな変じゃない!1日中食べてばっかりいる子とか、穴ぐらの中から出てこない子とか、誰も行ったことが無い森の奥まで行きたがる子とか・・・ちゃんと教育してあげないから、子供たちだってそんなふうになっちゃうのよ!!」

 横からまたさらにもう一匹の母親うさぎが割って入ります。

「だいたいアナタね、他人の旦那に手を出してどういうつもりなの!?ちゃんと自分の旦那を見つけなさいよ!!迷惑なのよっ!!」

 いきり立つ相手をよそに、彼女はしなやかな体をうんとそらせて伸び、ついでに大きなあくびをして答えます。きらきらとした真ん丸な瞳を見開いて。


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