投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

甘い時間
【同性愛♀ 官能小説】

甘い時間の最初へ 甘い時間 4 甘い時間 6 甘い時間の最後へ

甘い時間-5

 いつのまにか抱きしめられているのはわたしのほうで、優希を見上げるような格好になっていた。優希の瞳が不安げに揺れる。

「いやだった?ねえ、亜由美、こんなの嫌?」

「えっ・・・冗談、だよね?」

「冗談でもいいよ。ねえ、いまだけ、アタシの恋人でいてくれる?」

 明日になったら全部忘れて構わないから。

 そういう優希の言葉は切実で、聞いているほうが胸の痛みを覚えるくらい。いったいどうしたっていうんだろう。酔っているの?あれこれ考えて返事ができずにいると、優希はわたしの手を握り、もう片方の手でちょうど通りかかったタクシーを停めた。

「乗って」

「え?ちょっと」

 優希が運転手に目的地を告げる。それはわたしの家の最寄り駅の名前だった。ここからタクシーだと40分弱。深夜料金が加算されれば、ちょっとした金額になってしまう。

 わたしの耳元に唇を寄せて、優希がちいさな声で囁く。

「だいじょうぶ、アタシが払うよ。ねえ、そのかわり、着くまでの間だけアタシの自由にさせてくれるって約束して」

 自由に?意味がわからない。熱い吐息が耳にかかる。背筋がぞくぞくして、うまく頭が回らなくなった。優希が差し出した小指に、自分の小指を絡める。その瞬間、甘い約束が成立した。耳元の声は繰り返す。

「絶対に動かないで。声もあげちゃダメ」

 わけもわからないまま、優希の言葉に頷く。囁きの後、耳にそっと唇が触れた。

 驚いて身体を離そうとしたのに、両肩を掴まれて動けない。優希の目を見る。そこにはいつもの一筋の揺らぎもない挑む様な光があった。

 唇が重なる。熱く濡れた舌が入り込んでくる。男のそれとは違う、柔らかで繊細な動きが口の中で繰り返される。


甘い時間の最初へ 甘い時間 4 甘い時間 6 甘い時間の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前