甘い時間-4
目指すバス停は、繁華街から少し離れた人通りの少ない場所にある。わたしたちが息を切らせてたどり着いた時には、無情にも最終バスが発車したすぐ後だった。一応ふたりで運転手さんに止まってほしいとアピールしてみたものの、さすがに信号が青になったばかりの道路では止まってくれなかった。
「あーっ、最悪!バス行っちゃったよー!!」
「あはは、ごめんねえ、もうちょっと早く時間に気づけばよかった」
優希が申し訳なさそうにうつむいたので、わたしは慌てて優希のせいじゃないよ、と言った。
「わたしだって、あんまりおしゃべりが楽しいから、つい時間忘れちゃって。優希だけのせいじゃないよぉ」
「怒ってない?」
「ちょっと、なんでわたしが怒るの?」
「ほんとに?」
「ほんとだってば」
街灯が照らしだす優希の表情はちょうど影になって見えない。
あんまりにも元気をなくしてしまった優希が心配で、いつも女の子同士でそうするようにぎゅっと優希を抱きしめた。
「ねえ、ほら、怒ってないから。元気出してよ」
やっと優希がちいさく笑った。
「・・・恋人だから、許してくれるの?」
ああ、さっきの冗談の続きかと思った。だからわたしは、からかうように唇をつきだしてこう言った。
「そうね、恋人だもんね。じゃあ、仲直りのしるしにキスでもしようか?」
「亜由美」
思いがけず本当に優希の唇が重なってきて、声を出すこともできなかった。柔らかな感触、お互いの唇に塗ったグロスが混じり合う。なにこれ?どういうこと?