第2章〜第3章-7
「どうですか。この似顔絵と比較してみて」
「似ていると思います。この男です」
似顔絵を見た母は間髪入れずに答えた。
「やはり、この男か…。お母さん、娘さん。我々は三鷹署管内に網を張って、必ずこの男、いじろうを逮捕します。ご協力ください」
「協力って、どうすればいいのですか」
奈美は疑問を口にした。
「難しいことではありません。この男を見かけたら警察署までご一報ください。名刺を渡しておきますので」
奈美は桜井刑事から名刺を二枚受け取った。
「刑事さん、宜しくお願いします」
母は深々と頭を下げた。奈美も母につられて、ちょっこと会釈した。
桜井刑事は「おじゃましました」と野太い声で言ってから、軽く頭を垂れて、そしてパトカーに乗り込んだ。
パトカーが発進する間際、助手席からさっと手を上げて敬礼した桜井刑事の姿は渋かった。
「かっこいい刑事さんだ。あんな人に抱かれてみたい」
奈美は思わずつぶやいた。
「奈美ちゃん、何を言ってるの…。最近あなた色気づいてきたから、心配するよ」
母は呆れていた。
「お母さん、だいじょうぶ。素敵な男性を見つけてくるからね」
「もおぅ、それが心配なのよ。そんなことより、洗濯して乾いた物を取り込んでちょうだい」
「はーい」