第2章〜第3章-3
誉められてもいい気分ではなかった。篠塚の調子の良さにムカムカしてきたからだ。
「私に頼みごとって、何ですか」
突き放したような口調で言ってやった。
「あれ? 奈美さん、やけにツンツンしてる。さてはツンデレかな?」
「篠塚さん、用件を言ってください」
「はーい。シホリンから聞いていると思うけど、俺、シホリンのお姉さんと付き合っているんすよ。交際は順調。しかし…以前付き合っていた三鷹女子高校の葉子って女がしつこくて、困っているんだよね。俺、かなり迷惑してる。そこで、奈美さんに協力してもらいたい。葉子を喫茶店に呼び出す。俺と奈美さんの二人で葉子に会う。奈美さんは30分だけ、俺の彼女のふりをしてくれればいい。30分の話し合いで決着をつける。奈美さんみたいな美人が彼女と分かれば、葉子の奴、きっと俺をあきらめる。間違いない」
「話はそれだけですか」
奈美は突き放すように言った。
「それだけ? いや、なんなら本気で一度くらいデートしてもいいよ。楽しませてあげる」
「ことわるわ」