第2章〜第3章-23
梶谷の口の愛撫は多彩であった。歯を隠したくちびるで乳首を揉む。前歯で軽く噛む。乳首の先端を噛む。根元を噛む。
「ぁぁっ、ぁっ、ぃゃっ」
噛むだけではなかった。大きく口を開けて乳房そのものに吸いつき、強く吸う。吸いながら、舌で乳首をころばす。
「ぁぁ、あぅン、ぁぁン」
愛撫の種類によって、生じる感覚が多彩に変化した。噛まれたときの痛みをともなった悦びと、強く吸われたときのからだを突き抜けるような心地よさとは、はっきりと違うものであった。また、舌での愛撫は、春のせせらぎの中に身を委ねるような緩やかな快感が奏でられるのだった。
奈美は陶酔していた。陶酔の底には、梶谷に献身的に奉仕されていることへの心理的な満足感があった。もう恥ずかしさには慣れてきはじめた。
顎を引いて、目を開けてみる。視線を下に向けると、乳房に吸いついている梶谷の頭が見えた。
(昨日までのわたしには戻れない。新しい世界に入ってしまった)
梶谷は中腰の姿勢であった。奈美はベッドに腰掛けている。
(押し倒されたらどうしよう)
快楽の中に漂いながらも怖れもあった。
梶谷の手は新しい動きをしてきた。奈美の乳首に舌をころばせながら、ミニ丈ワンピースの下の腿に触れてきたのだ。微かな撫で方だった。
(困ったわ)
奈美は反射的にニーハイソックスを履いた足をきつく閉じた。
期待と怖れが胸の中で交錯していた。
「もう、やめて」
「どうしたの?」
奈美の乳首からくちびるを外して、梶谷は囁いた。
「恥ずかしいから」
「奈美さんをもっと知りたい。いいでしょう」
梶谷の手はワンピースの裾から入ってきた。
「いやっ」
奈美は梶谷の右手を押さえようとしたが、抵抗は中途半端でしかなかった。梶谷は易々と奈美のショーツに触れてきた。
「大好きだ」
奈美の右の乳首を強く吸いながら、右手は微かに動いて、奈美の綿ショーツを下った。