last-5
翌日
真由美は、まんじりとも出来ずに朝を迎えた。
ひとみに秘密を知られてしまった事を思い返しては、身悶えする程に自問自答を繰り返す。
円満な答えなど無いと解っているのに、気付けばまた、自分に問いかけている。
解っているのは、解決はひとみの考え如何に係っているという事だけ。
真由美は思った。
あの、異様とも思える嗜好の漫画本を愛する様な子だ。薫に対して、どんな如何わしい要求をしてくるか解らない。そんな事は絶対に拒否してやると。
(とにかく、薫を守らなきゃ)
真由美は、強い意志を胸に学校へと向かった。
「ひとみ!」
教室に着くなり、真由美はひとみを探した。何時もなら彼女の方が先に登校していた。
だが、その日に限って未だ来ていなかった。
(仕方ない。待ってよう)
真由美は席に着いた。
寝ていないせいか、頭がズキズキと痛む。少しでも和らげようと机に突っ伏して目を閉じた。授業開始までの寸暇、少し頭を休めておきたかった。
途端に、意に反して、頭の中をひとみが割って入ってくる。
そもそも、何故、ひとみはわたしの家を訪ねて来たのだろう。彼女と知り合って一年以上なるのに、その間、わたしの住所なんか気に掛けた事もなかったのが。
それに、あのウィッグもだ。考えてみれば、彼女との買い物は何度も機会はあったのに、何故、あの日に限ってお礼をくれたのだろう。
突然、真由美の身体がバネ仕掛けのように跳ねた──目が大きく見開いている。
(あの日だ……あの合宿で一緒になったあの日から、わたしを見る彼女の眼が変わったんだ……)
谷口ひとみが、特異な嗜好を真由美の目に晒したあの夜。
あの日を境に、彼女はこれまで以上に自分との距離を詰めてきた。
あれは、親密になりたい表れだったのだと真由美は確信する。
(だとしたら、薫を守る方法もある)
──狙いが自分だとしたらどうにかなる!
救う手立てが無いと思われたのが、気付けばわずかな光明が見えていた。