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誘淫画廊
【同性愛♀ 官能小説】

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誘淫画廊-2

 会社を出て、夕方の喧騒に沸く街を急ぎ足で歩いた。季節はもう春。街路樹の桜の枝にはふくらんだつぼみが小さな桃色の花びらをのぞかせている。少し前までは厚手のコートにマフラーが無いと寒くて仕方が無かったのに、今はもう薄いスプリングコートでじゅうぶん。

 日が暮れた後の風は少し冷たいけれど、こうして急いで歩いていれば気にならない程度の寒さ。すれ違う人たちの顔もどこか柔らかく優しく見える。本当に良い季節。

 今の会社に就職して、やっと1年。仕事にも少しずつ慣れて、同僚や先輩とも仲良くなり、楽しい毎日の中で学生時代から続いていた彼との遠距離恋愛を終わらせた。最近では唯一の悲しい出来事。

 原因は彼の浮気。たまたま彼がわたしの部屋に泊りに来たときに、浮気相手から彼のケータイに電話があってあっさりと発覚した。彼は隠そうともしなかった。

相手はどうやら近所に住むひとり暮らしの女の子で、彼はなかなかわたしに会えない毎日が寂しくて、つい手を出しちゃったんだ、なんて言ってたな。

「男はそういう生き物なんだよ。浮気くらい許してくれよ」

 そんなふうに開き直るのがまた腹立たしくて、何よりも他の女の子を抱いた手でわたしに触れようとするのが汚らわしくて、即座に彼を部屋から追い出してサヨナラを告げた。

 好きだったのにな。ふう、とため息が漏れる。

 18歳の誕生日から付き合い始めて、もうすぐ5年になるところだった。初めてのデートも、キスも、セックスも、この彼が相手だった。他の人とはふたりきりで遊びにも行ったことが無い。喧嘩もいっぱいしたけど、きっとわたしのことだけを好きでいてくれるって信じてたのに。

 痛いだけのセックスも彼のためだからと思ってずっと我慢してきた。キスされたり、頭を撫でられたりするのは気持ちいけれど、あの場所に入れられる瞬間は我慢できないほど痛い。いつまでたっても慣れない。そんな話を飲み会の時に先輩にしたら、

「さゆり、ソレはすごく損をしてるわよ。セックスってそんなに嫌なものじゃないんだから」

 なんて真顔で諭された。そばにいた同僚も真剣な顔で頷いていた。

「そうよ、もっと他の人といっぱいヤッてみるべきよ。体の相性とかもあるし」

 そう言った子にむかって誰かがアンタはヤリすぎなのよ、と笑い、わたしもなんとなくごまかすようにして笑っていた。先輩は自分で気持ちいいところを彼に触ってもらうようにお願いするといいよ、とか言ってたっけ。

 そんな恥ずかしいことできるわけない。それに、どこをどうされたら気持ちいいのかがわからない。

 街中を歩きながら変なことを考えている自分を戒めるように、右手で頬を軽く叩いた。ほんと、なに考えてるんだろう。いやらしい。

 そうして歩いているうちに、いつのまにか目的地の近くにたどりついた。チケットに書かれていた住所と、目の前にある建物を見比べる。間違いない、ここだ。


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