飛んでいく鳥-5
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冬休みの真っ只中。
寒気のする廊下を通って501号室に向かう。
自分の誕生日と同じで嬉しい、だなんてはしゃいでいた飛鳥を、昨日見た様に思い出す。
あれが長い苦難の始まりの日だなんて、その時は僕も、彼女も、そしてまだ生きていた両親も思いもしなかった。
廊下と同じく白いドアを開くと、ベッドに横たわる飛鳥がいた。
よく眠っている。最近はあんまり起きてないから、別に珍しくは無い。
指ひとつ動かさないその姿はまるで布に包まれた人形だ。更に痩せて、指先まで骨張っている。
白かった肌もかさかさになり、髪からも艶が抜け落ちていた。
・・・もう、長くないかも。
この頃やたら考える様になった。
もっとも、それはかなり前から医者の先生に言われてた事だ。
覚悟はしておいて下さいね、辛いでしょうけど、だと。まるで他人事だ。受け入れるのはこっちなのに。
「おはよう、貴大」
「起きてたのか姉さん」
へへっ、と飛鳥は笑い、右手を振った。
人形ではなく人間だ。当たり前の事だ。それが出来る限り長く、当たり前のままであってほしい。
不思議なものだ。両親が他界したと知っても、何の感情も起こらなかったというのに。
僕の願いは果たして届くだろうか。誰でもいい、たくさんの神様、どうか聞き入れたまえ。
でも死神にだけは・・・いや、中には僕みたいなひねくれた奴もいるかもしれない。
死を司るのなら奪うだけでなく、護ってくれたりなんか、なんてのがあったっていいはずだ。
飛鳥は僕がそんな事を考えてるなんて知る由もなく、笑っていた。
足元が緩んでいる。力が思った様に入らない−