『STEEL DUST GLAVES』人形舞刀篇-6
勝負は決していた。
白の胸を貫くは玲の鋭き刃。
「なぜ・・・?」
判らない。解らない。分らない。
麗花は知らぬ事であるが、
彼女の半身である白麗の知る事実。
“神の見得ざる手”は二者一対の拳。
万に一つの勝機は、それであってこそ。
二つで足して、初めて技と成す。
疲労した玲を見て、麗花は過信した。
奢りは死に繋がる。
基本技、それも麗花の過信のひとつ。
然し、それが白麗ならば戦慄したであろう。
切り裂かれた肉体は、記憶までも切り裂いた。
繋げた記憶は歪に噛み合わさってはいなかった。
“鷹噛”は玲が修練を積み続けた末に、珠玉の様に磨き上げた技。
それこそ、朝と無く、夜と無く、
一心に尽くし続ける乙女の様に。
“神左”は基より人間の技、
機械で邪法の様に捻じ曲げた技に、
そして何の修練も積んでいない技に、
磨き上げた“鷹噛”の技が敗北する筈が無い。
「成程ね」
得心した。やっとわかった。
自分はどう足掻いても玲には届かないと知る。
でも。
ああ。
追い求めた男の胸で死ねるなんて、之ほど幸福なことは無い。
「劉は、公社に」
絶命した。
その心は既に玲に敗れたその時から死んでいのかもしれない。
玲は麗花を貫いた剣を抜いた。
片膝をつく、ごぶりと口から大量の血を吐き出す。
臓腑が酷く傷付いていた。
立ち上がる。
また片膝をつく。
馬鹿な、こんな所で倒れる訳には。
意識が眩暈う。
玲が完全に意識を失う刹那。
自分の助けた人形の、悲愴な面が見えたが。
現実か、幻かも解らず。
玲は昏倒した。
To be continued