朱里_セフレごっこ。-6
『なくない。』
「いや、ないだろ。」
…だって。
つき合えば、いつか必ず別れが来るじゃないか。
恋愛ホルモンには賞味期限があるらしい。保って4年。後は気もちが冷えてく傾向なんだそうだ。あ、カップルが3ヶ月置きに倦怠期を迎えるってのも昔からよく聞く。
結局のところ、そういうことなのだ。仮に別れなかったとしても気もちはいつか冷めてしまう。それならば、好きな人とつき合うことに何の意味がある?私の長年のこの想いだって、きっとセフレだからこそ続いているものなんだ。うん、そうに違いない。
かいつまんだ内容をまくしたてて話したところ、鼻で笑って一蹴された。
「―――はぁ?ばーか、んなもん戯言だ。」
『何で言い切れるの。』
「だって俺17からだから……かれこれ6年?お前のこと好きだもん。」
……何!?そんなの全く知らない。聞いてない。だって初めてシた時だって、ていうか高校の時からずっと、そんな態度私にしてこなかったじゃないか。
くるっとからだの向きを変えてみた。私の顔の目の前に、太一の顔がある。私はじっとその目を見つめるけれど、太一は一向に視線を合わせようとしない。最中よりも頬を赤らめていて、何だか可笑しくなった。
『……何で言わなかったの。』
「お前がそんなバカな考え方してっから、こっちはうかつに告れなかったんだっつーの。ばーか。」
『……』
「…沈黙かよ。」
『…そういえば、あの人とどんな話したの。』
「話なんてしてねーよ。力任せで勝負。んで勝利!」
『へー。その細っこい腕で?』
「……」
『…沈黙かよ。』
「…んで?俺と訳のわからないホルモン?のメカニズム、どっちを信じんの?」
『…んー…』
「……そこは嘘でも俺を選べよ…」
『っはは!ばーか。』
こんなぐだぐだな会話がしばらく続いた。
太一が言うところの“戯言”な考え方を、私は気づけば4年以上も意識してしまっていた。それを今さら簡単に覆すことなんて出来ない。…でも。
名前も知らない誰だかの発表したホルモンの話よりも、ずっと側にいてくれた太一のぶっきらぼうな言葉の方が私の胸にストンと納まりよく填まった。
あーぁ、仕方ないな。信じてやろうじゃないか。
とりあえず、もう少し焦らしてからキスでもしてみようかな。