宴のあとで-4
「エリナ、ちょっと外の空気を吸おう」
舞台の下から呼びかける岡田の声に思考が中断される。
舞台を降り、乱交の場と化した部屋を抜けて玄関を出た。冷たい風が首筋を撫でていく。すでに太陽は落ち、空には大きな月が白く輝いていた。
ログハウスの手すりにもたれて深呼吸をする。山の中特有のしっとりと湿った冷たい空気が肺に満ちていく。
「楽しめた?」
岡田の笑顔はいつものように穏やかで、肩に触れる手もいつに変わらず温かい。
「血の匂いがしたわ・・・」
「そりゃあね。あれだけ激しいプレイをしたら血も流れるさ」
エリナは岡田の耳に唇を寄せ、熱い息を吐きかけながら囁いた。
「ここで死んでしまったひともいるのね。愉しみの中で幸せに溺れながら死んでいったひとたちが」
岡田が複雑な表情を見せる。エリナは岡田の耳に歯を立て、くぼみを丁寧に舌で撫でながら続けた。
「隠さなくていい。望んだものの先にたまたま死があっただけ・・・わかるわ、わたし、わかるのよ」
「エリナ・・・」
岡田の唇がエリナに触れる。強く舌を吸われながら遥か上空に浮かぶ丸い月を見つめる。遠い記憶がよみがえる。
満月の夜。まだ幼く、母を求めて泣いた夜。