加藤エリナという女-9
母親が帰宅してからもエリナは毎晩のように父親を誘い、母親の目を盗むようにして自室や風呂場、ときには真夜中のキッチンで父親とお互いの体を求め合った。決して許されることの無い関係だからこそ、エリナは飽きることなく続けることができた。そしてまた、母親もそんなふたりの様子にいつまでも気づかないほど鈍感では無かった。
高校1年生のクリスマスを目前に控えたある週末の夜、母親の怒りは爆発した。仲睦まじかったはずの両親の関係はエリナを挟んで崩壊し、繊細な父親はその優しさのあまりに罪の意識に耐えきれず、自ら命を絶った。母親は半狂乱になり、意味を為さない叫び声をあげながら道路へ飛び出し、折悪しく走ってきた大型車両に轢かれて亡くなった。
エリナはただ、求めていたものが突然に奪われたことに対して怒りを感じていた。どうして勝手に死んでしまうのよ・・・まだわたしはパパに飽きてはいなかったのに。
そうして彼女のもとには、これまで両親と暮らしてきた2階建ての住宅と多額の保険金が遺された。学校では両親の死因は不幸な事故ということになっているらしく、多くの憐みの視線が集まったけれども、エリナはただ淡々と授業を受け、必要な課題をこなし、それなりに友人とも遊び、受験の時に困らないと思われるだけの勉強をした。
夜毎に自身の体を慰めながら。
高校2年生になり、友達の紹介で家庭教師の先生をお願いすることになったとき、エリナの欲求は再び目覚めた。
家庭教師としてエリナの家を訪れたのは、大学3年の男子学生だった。色白で真面目そうなその学生に初めて会った時、エリナは彼を『欲しい』と感じた。
彼の授業を受けて3か月が過ぎた頃、エリナは授業後に熱のこもった声でつぶやいた。
「先生が好き」
驚いた顔の学生の前で洋服を脱ぎ、ベッドに誘った。学生は恥ずかしそうに目をそらしながら、自分にはそういった経験がまだ一度も無いのだと告げた。
「大丈夫よ。エリナが先生に教えてあげるわ」
エリナは丁寧に学生のシャツをボタンを外し、ジーンズのジッパーを下ろしてやった。そこはもうすでにこれ以上ないほど大きく固くなり、先端からは粘液が流れ出ていた。迷わずそこに舌を這わせ、口の中に頬張る。
「うわ・・・っ、だ、だめだって・・・」
「先生、こんなになってる・・・ねえ、エリナのこと好き?欲しい?」
ぴちゃぴちゃと音を立てて舐めると、学生は泣きそうな声をあげた。
「ほ、欲しいよ・・・でもそんなことできるわけないだろ・・・っ、高校生に手ェなんか出せないって・・・」
「誰にも言わないわ。だってエリナも先生のことが欲しいの・・・ほら、触って」
学生の手をつかんで、自身のスカートの中へと導く。愛液が流れ続けるそこに触れさせる。
「わかる?こんなに先生が欲しいの・・・先生もエリナのこと、もっと欲しがって・・・」
学生はエリナを床に押し倒し、乱暴に洋服を引き裂いた。不慣れなキスは歯が当たって少し痛かったし、買ったばかりのブラウスは破れてしまった。はやく挿入しようと焦れば焦るほど学生の男性器はうまく目的の場所に入ることができず、エリナは手を添えて腰をうまく動かし、それを自身の中へと受け入れた。
「あ、すげぇ・・・気持ちいい・・・俺、もう・・・」
呼吸も荒く学生が獣のように腰を打ちつける。エリナは求められている快楽に酔った。
「先生・・・うれしい・・・」
彼はすぐに果て、それでもまた間をおかずにエリナの体を求め、一晩のうちに何度も何度も行為を繰り返した。それから冬を迎えるまでの半年ほどの間、ふたりの関係は家庭教師と生徒として、またセックスの良きパートナーとして穏やかに持続した。