淫獄の宴-4
肩を抱かれたまま、駅とは違う方向へ夜道を歩いた。ひんやりとした夜風が火照った頬をさらりと撫でて過ぎていく。だんだんと街灯が少なくなる。人通りのない寂しい場所へ。体の疼きはおさまる気配を見せず、それは衣服が肌にこすれるだけで声が出そうになるほど。
坂谷さんはそんなわたしの様子をみて、小さく笑った。
しばらく歩くと倉庫のような建物が密集している場所に出た。潮の香りが強く、海がすぐそばにあることがわかった。港湾関係の倉庫だろうか。大きな赤いレンガ造りの建物が整然と並び、それぞれの建物には大きく数字が書かれていた。それぞれの数字が月明かりに照らされてぼんやりと浮かぶ。
坂谷さんはそのなかの「5」と番号のふられた倉庫に向かい、重厚な鉄扉に手をかけた。
ギイ、と嫌な音が響いて扉が開いた。扉の中から薄い光が漏れてくる。その途端、わたしは背中を思い切り蹴られて前のめりに倒れた。木製の床にひざと腕をしたたか打ちつけ、その痛みに呻いた。
「痛っ・・・な、何を・・・」
「遅かったな、やっとヒロインのご登場だ」
「坂谷、おまえのことだから途中で味見してたんじゃないのか」
「こっちはもう盛り上がってるぞ」
数人の笑い声、それに交じって啜り泣くような声が反響して聞こえる。肩にかけられていたジャケットが奪い取られ、わたしは半裸の状態で床に転がっていた。
「立てよ。みんながお待ちかねだ」
腕を強く引かれて立ち上がる。倉庫の中の異様な景色が目に飛び込んできた。
いくつもの蝋燭の炎が揺れている。そのたよりない明かりが照らし出す倉庫の中には、荷物はほとんどなかった。天井は高く、太い梁が数本伸びている。そしてその梁からは頑丈そうな鎖がぶら下がっていた。
鎖のひとつには全裸の女性が両手を吊られ、片足だけを上げた不自然な形で縛られていた。啜り泣くような声は彼女のものだろうか。ズボンを下げて彼女の後ろで腰を振っている男がいた。またその足元では、別の女性が同じく全裸の状態で大きく足を開かされ、目の前に差しだされた男性の性器を舐めていた。彼女の乳房を後ろから揉みしだく手も見えた。苦しげな喘ぎ声が小さく耳に届く。
「なに・・・これ・・・」
驚きのあまり言葉にならない。わたしのまわりを数人の男たちが取り囲む。そのなかにはニヤニヤと笑う坂谷さんと部長の姿があった。
部長がわたしの髪をつかんで自分の方を向かせた。
「大森さん、歓迎会の途中で帰っちゃだめじゃないか。まあ、坂谷君が連れて来てくれたから良いようなものの・・・君にはいまから大切なお仕事があるんだ」
「仕事・・・?なに、坂谷さん、どういうこと・・・?」