序章〜第1章-7
オルガスムス(絶頂)の前ぶれは、最初奈美をからめる程度に襲う。その鋭い感覚が飛び去って、次により強い感覚が寄せ、それもななめに逃げ、奈美の意識に期待が高まる。
ふいに電流が花芯に火花を散らす。前ぶれの感覚とは似ていながら異質だとはっきりわかる強烈さで奈美の花園を貫き、全身に散っていく。
「あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっっ」
内部から込み上げるものを感じた。強烈な感覚のなかでも奈美は小豆大の芽を擦るのを止めなかった―。
(気持ちよかった)
からだを硬直させて余波の遠ざかるの見送りながら、軽い疲労のなかで休む。
(恋人に愛される場合は、どんなふうになるんだろう?)
自慰よりも恋人に愛撫されたほうが、精神的な豊かさがあるのかもしれない。ぼんやりとそう考えた。
愛液は内腿から流れ落ちて、ネグリジェをぐっしょりと濡らしていた。
(朝早く、水洗いしなくては)
奈美は用意していた紙で、そっと自分を拭った。そのとき紙か指の先が花の芽に触れないように気をつけなければいけない。電流がからだを貫く前とは違って、鋭い苦しさがそこから生じるのである。それは痛みではなく、表現しにくい苦しさだった。
ネグリジェを脱いだ。全裸のままでふとんをかけた。心地よい疲れのなかで眠りを待つ奈美に、ある虚しさと後悔の念がちらつく。罪の行為ではないと納得させているものの、どうしても避け得ない心の動きだった。それが何に由来しているか、わからなかった。しかし、虚しさと後悔の念はそう強いものではないので、奈美は意識的にそこはかない罪の余韻に浸る。
(女性だから、女性だもの…)
奈美は両の乳房に両手をそれぞれあてがった。すてきな男性に愛されることを願って、眠りに入った。
つづく