序章〜第1章-4
ナルシストかもしれないけれど、でも、それだけじゃない。乳房の大きさの変化や胴のくびれや腰から足のラインなど、女性としての肉体的成長をたしかめたい。自己観察が美容の第一歩になると意識しているのだ。自分の目線から見る黒い林の部分の感じと、鏡で見る感じでは、かなり違う。立っているとき、自分の目で見えるのは黒い林だけだが、鏡でははっきりと、谷間の線が写し出されて、その線の林へと消えてゆく先端に、小さなピンクの芽がのぞいているのが見えることがある。それが自分のもっとも敏感な場所だと知ったのは中学二年のときだった。
今、ときとして愛しくなる場所だった。
奈美は、両手でふたつの乳房を包み込み、あごを引いた。そして、首をまわす。リラックスのための体操だった。
姿見のカバーを掛けて、自分の姿を消した。シースルーのネグリジェを身にまとった。枕元にティッシュの箱を用意した。電灯を消して、暗闇の中、ベッドに仰向けになった。まっすぐな姿勢だった。目を閉じる。
(このまま眠ろうか)
いつもそう問い掛けてみる。しかしやはり、週に二回はいいと、自分に許している秘めごとなのだ。しかも、よろこびへの期待で、下着を脱いでいるときから、内から熱い泉が湧き出ていた。腿をすり合わせたときにも、それは自覚できた。
ネグリジェの前ボタンは留めていない。左手で右の乳房に触れてみた。乳首は勃起していた。
奈美はかすかに両腿をひらいた。右手は腹を這ってくさむらを撫で、一度そこを通りすぎて腿に置かれた。手のひらは腿を冷たくすべっこく感じる。腿が手のひらをどう感じるのか。自分ではわからない。人の手だったらはっきりと分かるだろう。
奈美の指はピアノを弾くように腿をたたいたあと、そっと横にそれた。やわらかなふくらみを撫でた。自然に、足はもっと開かれる。左手は乳房をギュッと握りしめた。強めに揉みしだいた。桃色の乳首は固く尖っている。
右手はなだらかな山脈を越えて、内側の花びらに触れた。
(ぁっ…)
少し苦い快感がからだに走った。
奈美の指はゆっくりと動いて、二つの花びらを開いていった。指は熱い泉で濡れた。
(もうこんなに…。いい…)
闇の中で、奈美は目をひらく。何も見えない。