序章〜第1章-2
「ごめん、ごめん。実はね…ゆうべ、井上さんとラブホ行ったんだ」
「えっ…」
奈美は息を飲んだ。
「びっくりしてるの?」
紀美の声は弾んでいた。
「うん…ラブホってラブホテル?」
「あたりまえじゃん。ラブホテル以外にラブホってないでしょう」
「うん…。びっくりした…」
同級生の紀美が、社会人の男性と交際しているのは知っていたが、ラブホテルに行くとは、呆気に取られる思いだった。
「タケオさん、凄く情熱的だった。もう、身も心もトロトロになっちゃった」
「そう…」
言葉が出なかった。
「舐められたの」
「えっ…」
「私がいちばん感じるところを舐めてくれたの。嬉しかった」
紀美の言葉に動揺した。自然に膝と膝を擦り合わせていた
「いっぱい濡れちゃった」
「そんな話、聞きたくない」
奈美は怒った。からかわれていると思った。
「奈美、怒ってるの?あんたの為に話しているのよ」
「私の為?」
「奈美も彼氏つくりなよ。気持ちいいことは、若いうちから経験したほうがいいよ」
「私はまだいいの…」
「どうして? 奈美は綺麗だし、胸もおっきいじゃん。男性としたいと思っているんでしょう?」
「思ってないわ。もう切るね」
むかついたので、ケータイをOFFにした。
いけないことを聞いてしまった。刺激的すぎる。紀美の言葉に反応して、熱い泉が零れてきていた。奈美は、ベンチの周りをぐるっと見た。誰もいない。良かった。紀美のいじわる。