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氷の解けた日
【SF 官能小説】

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ミアのメッセージ-1

 私はミアを一度見ている。
私が冬眠から目覚めたときに覚醒係りが彼女の画像メッセージを見せてくれたのだ。
それは彼女が死ぬ直前の75才のときのものだった。

 そのとき彼女は穏やかな笑みを浮かべてメッセージを伝えてくれたのだ。

「ハヤテさん、私はミアと言います。あなたのひ孫にあたります。
あなたの娘さんのナデイアに生まれたばかりの男の子がいたでしょう?
ハザンといいますが、それが私の父です。
父は38才のときに病気で亡くなりました。そのとき私はまだ2才でした。

 あなたは私のことを知らないかもしれませんが、私はあなたのファンでした。
あなたが格闘家として活躍している姿は沢山の映像記録に残っています。
私はその姿に恋焦がれて少女時代を過ごしました。
ですから私が44才になって、あなたが3回目の解凍をして目覚めるのを楽しみにしていたのです。
ところが14才になったときに、私は20才まで生きられないと医師に言われたのです。 父のハザンと同じ病気で父の半分くらいしか生きられないというのです。
 私がすっかり絶望していたとき偶然わたしはマチモリに会って病気を治してもらいました。
 マチモリはその30年後にあなたが解凍されたときに、どんな医学でも治らないというあなたの全身に廻った癌をこっそり治してくれました。
そうすることを私と約束していたからです。

 でも、そのとき既に冬眠を始めて80年経っていたのに、さらに40年延長することをあなたのお孫さんで87才のトッキー伯父さんが決定したのです。
私はこっそりお金を使って再冷凍を遅らせました。
あなたの病気が治るのには1週間は解凍状態を保たなければならなかったからです。
皮肉にも私はお金持ちだったので、40年延長する費用は私が出しました。

 私は生きているうちにあなたとは会えない道を自ら選んだのです。

 その20年後なんとマチモリが捕まりました。彼は人類の友なのに、秘密組織の息がかかった行政側が殺処分をすることになったのです。
有害な人外生物という烙印を押された為です。

 でもそのころアルバ博士という人が人格再生プログラムというのを開発していて、人間のデーターを総て電子化して記録する実験の許可を申請していました。

 行政側は人間に極めて近い生き物としてマチモリを実験動物として使うように指導したのです。 

 博士は殺処分される前のマチモリのゲノム分析をして驚きました。
人類のゲノムでは染色体が2万以上が普通なのに、マチモリは6万個近くもあったのです。

 つまりこのマチモリの人格再生に成功すれば、人間はそれより構造が簡単なので安全なことが間違いないと証明されることになるのです。

 アルバ博士は天才でしたが、重い持病を持っていました。
マチモリは博士の病気を治す代わりに、自分の人格プログラムのコピーを私に渡すように頼んだのです。
そして博士は約束を守り、私はメモリーチップを受け取りました。

 そしてエヴァーグリーンスリープ社の冷凍覚醒係りのロボットに、このチップを入れるようにしました。
ハヤテさんが目覚めたときに電脳社会での生活をサポートするためにです。

 アルバ博士は自分の持っている電脳知識もすべてメモリーチップに一緒に入れてくれたので、マチモリは電子生物としては最も優秀な存在だといえるでしょう。

 このエヴァーグリーンスリープ社は少し前に倒産しました。
ハヤテさんの冷凍冬眠装置のある工場の一角と覚醒係のロボットは私が個人的に買い上げています。

 ハヤテさまが目覚めた後、廃棄処分されることになりますので、ロボットのメモリー・チップを抜き取って自分にあてがわれた住居の端末に入れて下さい。

 住居は都営アパートを契約してキープしてますので、すぐ住むことができます。
トッキー伯父さんの贈り物のDマシーンとメモリーチップを忘れずに。
 私は今75才です。後9年であなたは目覚めますが間に合いそうもありません。
その為、私はもう自分の人格プログラムを登録しています。
 
 トッキー伯父さまが残して行った、Dマシーンも現代の端末に合うように改良してもらいました。

 そのDマシーンの中に私がいますので、いつでもお会いできます。
ではそのときまた。」

 それが、覚醒直後に聞いたミアのメッセージの内容だった。
そのときのミアの面影が私の手を引く幼女の顔に刻まれていたのだ。 


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