合体アバター-3
電子生物と合体した私はアバターの中のゲーマーの姿まで見ることができるのだ。
ヒトゲノムは2万個以上の染色体からできていると言われるが、マチモリの染色体は6万個近くで人類の倍以上もあるのだ。
その複雑な構造で人の体の病気を突きとめ治療したり改良したりする働きができるのだ。
アニョンの体には問題点がいくつもあった。
若くて溌剌としていて可愛い少女だが、子宮筋腫があり。
心臓の弁が不完全だ。視力は悪く複性近視性乱視である。
また極度の冷え性で血流が悪く、貧血症だ。
一番問題なのは癲癇症だということだ。幼少時に一度発作を起こした形跡がある。
そういうことは現実世界でマチモリが知るためには、実際に膣内に微細な管を挿入してナノ細胞の探知機能で全身の血液を循環しながら探るのが普通だ。
だが、電子記号化したアバター体を見れば透視も病巣も一目瞭然に知ることができるのだ。
「王子さま。本当に私とセックスするのですか?」
白雪姫のアニョンは再びそう質問した。私は彼女の両の2の腕を軽く掴んだ。
「あなたの見かけの体は十分セックスできる体だと思います。
けれども実際のゲーマーの体は、まだセックスするには十分発達していないと思います。だからセックスはしない方が良いでしょう」
白雪姫は眉間に皺を寄せて鼻の下に人差し指を当てると左右に揺すった。
「王子さまは、私の本当の姿がわかるの? なぜ? 」
「私はゲーム空間に住む電子生物だからとでも言っておきます。
あなたはきっとこの世界に吸い寄せられたのだと思いますが、それには理由があります」
「理由? どんな理由なの」
私はアニョンを説得するための方便を考えた。
「あなたの体はあちこち悪い所があるのです。
あまり丈夫な体ではありませんね。
そのせいでこの空間に吸い寄せられたのです。
だから今のままでは、ここを出ることはできません。
弱い体だから、この世界の磁力に逆らうことができないのです。
私の使命は弱い体が原因で吸い寄せられたあなたのような人をすっかり治すことです。
体が治ればここから出ることができます。治してほしいですか?」
白雪姫は両手を広げて胴体を左右に揺らした。
「わあ、もちろんだよ。嬉しいな。治してくれるんだよね。
そしたらここからも出て龍の谷にも戻れるし」
「治すのは簡単だけれど交換条件があります。
あなたの体の中にある卵子を一個だけ頂きます。
それは全然痛くないし怖くもありません。
むしろとってもいい気持で声を出したくなるくらい気持ちが良いのです。
そして、その卵子の半分を使って病気を全部治してしまいます。
後の半分はご褒美として私が頂きます。そういうことなんですけれど宜しいですか?」
「卵子って私幾つ持ってるのかなあ……知ってる?」
「数え切れないほどたくさん持っているます。
だから心配しないで下さい。
でも、卵子を頂くとき、あなたはあんまり気持よくて声をたくさんだしてはしゃぎすぎるので、とっても疲れて3日くらい寝込むかもしれません。
だからゲームはその間休んでください。無理にリアル・ゲームをすると、この間のようにあっという間に龍に食べられてしまいますから」
「あは……そうだね。この間本当に食べられたもの。
じゃあ私の体を治してください、王子さま」
私は前に足を投げ出してベッドの壁側の柵に背中を凭れさせた。
そして白雪姫を手招きした。
「こっちに来て、抱っこして治すから」
白雪姫はちょっと躊躇った。そして私の膝に横座りした。私は優しく言った。
「この方が良いですか?本当はこっちを向いて座って欲しいのですが」
白雪姫は私の脇腹に膝頭をぶつけてみせた。
「だって、ほら足がぶつかって、そっち向けないよ」
「仕方ありませんね。それでは、ちょっと一回立って見て下さい」
私は白雪姫を一回立たせて、膝を跨いでほしいと言った。
白雪姫はまた躊躇っていた。だが辛抱強く待っていると足を跨いでくれた。