本日快晴-9
翌日、バイトに来た芳郎とついてきた璃子は、小夜美から沙耶があの世に旅立ったと聞く。
「散々、騒がせておいて勝手に逝くなよな」
「沙耶ちゃんらしいけど……」
沙耶が居なければ芳郎と璃子がお近づきになる事は無かったし、もしお近づきになれても璃子の天然のせいで台無しだっただろう。
沙耶の覗き癖と、お節介で2人は付き合えたと言っても過言ではない。
「ちゃんとお礼言いたかったなぁ……」
「……また、会えるさ」
「そだね」
絶対に逢える……2人には確信があった。
ーー10年後ーー
高校卒業後、直ぐに就職した芳郎と、専門学校に行って医療事務の資格を取った璃子は3年前に結婚。
可愛い娘が産まれ、その娘は現在1歳半。
芳郎はすっかり親バカになっていた。
「沙耶〜俺の可愛い天使ちゃん〜ただいまぁ〜」
娘の名前は沙耶。
「おか〜り、今村ぁ」
沙耶の返事に芳郎はがっくり首を落とした。
そう、娘の沙耶は女子高生幽霊、沙耶の生まれ変わり。
どうりであの時、もう1度逢える確信があったワケだ。
「沙耶も今村だぞぉ?」
「ん〜…しょっか、おか〜り、パァパ」
あの頃の記憶は持ってないが、たまにこうして女子高生幽霊、沙耶の態度を取る事がある。
その度、さりげなく修正してやると何の疑問も持たずに納得する。
芳郎は沙耶を抱き上げて璃子に振り向いた。
すっかり大人びた璃子は優しい微笑みを浮かべている。
芳郎は沙耶を抱え直し璃子に顔を寄せてキスをせがむが、璃子はキョトンとして首を傾げた。
「りこってばどんかんすぎぃ〜今村、かあいそぉ」
沙耶の言葉に芳郎と璃子は吹き出して笑い、キスを交わした。
空は雲ひとつ無い青空……本日快晴。
ー完ー