本日快晴-3
『そんな淫乱が好きなんじゃない?男なんてそんなもんよ?』
「そうなの?」
『そりゃあね、それを自分のモノにするのが良いんじゃない』
沙耶の言葉に璃子はサァッと青ざめた。
初めて芳郎と繋がった時に『俺のもんにならないか』と言われた……それが既に告白だったとしたら……。
『あんたって本当に鈍感よね……今村かわいそ〜う』
せっかくの告白を奴隷だの肉便器などで返されたら泣くに泣けない。
璃子は両手で顔を覆って自分の間抜けさを呪った。
「本当にどうしよう」
『更に言わせてもらえば、今村かなり落ち込んでるわよ?』
「嘘?!何で?」
『メールも着信もスルーされたら誰でも落ち込むわよ』
璃子は慌てて上着を羽織って外に出る。
「璃子?!」
「ごめんっママ!!帰り遅くなる!!」
「分かったわぁ沙耶ちゃん、ちゃんと成仏するのよぉ〜」
沙耶の心残りを解決しに行くのだろうと勝手に解釈した母親は、快く璃子を送り出した。
喫茶店『黒猫』の営業は夜8時まで。
片付けと戸締まりは芳郎の仕事だ。
店内の掃除をしていた芳郎はふと外を見て腰を抜かすほど驚いた。
「璃子?!」
CLOSEの札が掛かったドアを開けた芳郎は、赤いキャミワンピに黒いカーディガンを羽織った璃子を見てとりあえず一言。
「……やっぱり、赤いの似合うな……」
そんな芳郎に向かって璃子は勢いよく深々と頭を下げた。
「ごめんなさい!!」
最終的にトドメを刺された芳郎は苦笑いを返す。
「いや……お前のせいじゃないし……俺に魅力が無かったっつう事で……」
「へ?」
芳郎の返事に璃子はキョトンとした顔を上げた。
『んもう!!馬鹿璃子!!それじゃ断ってるみたいじゃないっ!!』
黙って見守る……もとい、覗くつもりだった沙耶は璃子のあまりの間抜けぶりに姿を現す。
「沙耶?」
「あああぁぁっそっか、そうよねっ……えっと……そうじゃなくて……」
「つうか待て。とりあえず中に入ってくれ」
何やら言い訳をしようとしている璃子を止めた芳郎は、こんな所じゃ何だから……と璃子を店内に入れる。
璃子をカウンターに座らせてお気に入りのハーブティーを出した芳郎は、ひとつ席を空けて横に座った。