甘えるのが下手っぴ。-1
夕方。
いつものように郁にお誘いのメールを送ると、めずらしくNGの返事が。
(・・・あれ?いま勤務中じゃないのか?)
郁の勤める歯医者に通院中の為、自然と彼女の勤務時間は把握している。
クソ真面目な郁が就労中にケータイをいじる訳がない。
なんとなく気になって返事をすると、10分ほど経って返信が届いた。
“もともと有給はもらっていたんですが、体調崩して寝込んでぢふ。”
(・・・文末!「ぢふ」って!)
さいごの誤字に、つい部屋で一人吹き出してしまう。
ひとしきり笑ったあと、冷蔵庫の中身を選別してビニール袋に詰めた。
まぁ・・・お隣さん同士だし、ね。
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「あれ・・・?夏目さん・・・?」
『―――――ん。おみまい。』
いつもは自分の部屋で会っていたので、なんだか照れくさい。
玄関のドアが開いた瞬間目をそらし、先ほどビニール袋に詰めたヨーグルトとスポーツ飲料水を差し出した。
「わぁ・・・ありがとうございます。うち、いま冷蔵庫からっぽで・・・」
『自炊しろ女子!
・・・って、郁ちゃんホント大丈夫?首まで真っ赤だぞ!』
ツッコミを入れたところで、やっと郁に顔を合わせられ状況に気づく。
冷却ジェルシートを額に貼った郁の手をとると、小さな手が燃えるような熱さだった。
大丈夫と言い張る熱いからだをベッドへ戻るよう促し、俺は急いで自分の部屋から看病に使えそうなものを持ってきた。