怒り-2
朝のホームルームの始がせまり、ジュンはなりふり構わず堀田の居る一年三組の教室に向かった。
「あの、堀田君は居ますか?」
ジュンは教室に入ると近くに居た生徒に尋ねた。男子生徒は教室を見渡し、ジュンに言う。
「あー堀田は今居ないな、あいついつも遅刻して来るから、会いたいんなら昼に来た方がいいよ」
「そう……ですか……」
ジュンはやり場のない怒りを必死に押さえ付けた。
「で、堀田に何の様なの?」
ジュンの青ざめた顔を見て、男子生徒は興味本位で聞くと、ジュンは動揺したような口調で男子生徒に、
「いえ、別に、また昼に来ます」
そう言うと駆け足で三組を去っていった。
今の気持ちで自分の教室に戻る事も出来ず、ジュンは屋上で昼になるまで待つ事にした。
屋上は何もないコンクリートと周りを緑フェンスで囲んだ世界だ。ジュンはその屋上の真ん中にゴロンと寝転び空を見ながら昼を待った。
その間ジュンは何も考えなかった。静かな屋上でただ心を落ち着かせるだけだ。
昼のチャイムが鳴り、ジュンは再び三組に向かった。
「あの堀田くんは居ますか?」
三組の教室でジュンは堀田を探すと、堀田が眠そうな顔をしてジュンの前にやって来た。
「何だよ、何の様だ」
「あの、三浦佳奈のクラスメートなんだけど、ちょっと佳奈の事で話がしたくて」
「あっ、佳奈の?」
「ここじゃ人が居るから、出来れば場所を移して話したいんだけど」
「めんどくせーな、ここでいいよ」
不機嫌な態度を見せる堀田にジュンの怒りが沸き立つ。
「いや、面倒いと言っても佳奈の話しだから、別の場所で」
「お前何様なんだよ、俺がここで良いつってんだからここで話せや」
今にも殴り掛かりたくなるのをジュンは押さえ、頷いた。
「分かった。じゃここで、
君は佳奈と付き合っているんだよね、今佳奈がどんな状態か知ってる?」
「いいや」
「酷く怯えてる、あんな佳奈初めてだ」
「おい、俺が佳奈に何かしたって言いたいのか」
ジュンは頷いた。
「何だテメー、喧嘩売ってんのか!」
堀田は激情しジュンの胸倉を掴んだ。
「お前、佳奈の幼馴染だろ、佐々木っつったか、もう佳奈は俺の女なんだよ、お前には関係ない事だ、ひっこんでろ」
堀田は掴んだ胸倉を突き放した。ジュンはよろけるが直ぐに姿勢を取り戻して、堀田を睨んだ。
「佳奈がお前と別れたいと言っている。だから佳奈と別れろ」
「さっき言ったが佳奈と俺の事はお前には関係ないだろ、黙れよ」
「佳奈と別れろ、お前に佳奈はふさわしくない、別れろ!」
「別れねーよ、だいたいお前みたいな奴が指図するなんて、頭が高んだよ」
「それ、どういう意味だ。おれみたいなって」
「お前も佳奈も部落の者だろ、部落の奴が俺に指図すなや!部落の分際で図々しんだよ」
ジュンは一瞬止まった。堀田と言う男は何て酷い言葉を軽々しく言いのける。これが佳奈の彼氏なのか、と
ジュンは唖然とした。堀田の罵声は続く。
「部落の女と付き合ってやってるんだ。お礼を言っても可笑しくない、お前らみたいな人間もどきが」
ジュンは目をつぶり冷静さを保つ、一瞬時間が止まった様な感覚にジュンは襲われ、思考を巡らせた。
この男は話し合いで解決できる相手ではない、佳奈に近づかないようにしなくては……そう心に決めた。